【改訂版】ワケあり上司とヒミツの共有

「そんな事になっていたなんて、全っ然知らなかった……!」

ハナちゃんが手で顔を覆う。私は泣いているのかと思い、そっとハナちゃんへ手を伸ばす。

「ハナちゃ――」

「そんな面白い事、なんでアタシも混ぜてくれないのよっ!」

しかし、私の予想を裏切り、ハナちゃんはガバッ!と立ち上がり、そう叫んだ。

「おも……は…ぇ……?」

お、面白い……?私は口を開けたままポカーンとしてしまう。

そのままで目線だけを雪ちゃんに向けると、大体同じ様なリアクション。ただ雪ちゃんの場合、呆れて物が言えない。そんな感じだった。

「ちょっとハナ。アンタ何言ってるの?江奈は酷い目に会ってるのよ?」

雪ちゃんがこめかみをピクピクさせながらハナちゃんを睨む。

「その事じゃないわよ!盗撮は絶対許せないけど、二人で暮らしてるなんて、ずるい!」

……そこに食い付いたんかいっ!思わず関西弁で突っ込みを入れそうになった。

「全くアンタは……」

雪ちゃんが、ピクピクさせていたこめかみに人差し指を立てて、首を横に振った。ハナちゃんはキィーッ!と、持っていたおしぼりをくわえている。

「だってだって!江奈っちを雪ちゃんが独り占めにしているなんてずるいじゃない!」

独り占めって……。

「あの…ハナちゃん、落ち着いて」

私は興奮しているハナちゃんをなだめた。すると、いきなりガバッ!と抱き締められる。

「わっ!」

「江奈っち!そんな卑劣な事をする奴になんか負けるんじゃないわよ!雪ちゃんやアタシがいるからね!」

「ハナちゃん……」

ハナちゃんの温かさや言葉が、じんわりと心に染み渡る。

「ありがとう」

私も、うりゃっ!と、負けじと抱き付いた。

「んもぅ~~~♡可愛いんだからっ!」

すると、ぎゅぅぅぅぅっとより力が込められる。ち、ちょっと苦しい……。

「ハナ!いい加減離しなさい。江奈が苦しがってる」

「え?……あら、ごめんごめん。江奈っち大丈夫?」

ハナちゃんの腕の力が緩んだ。

「……はぁっ!大丈夫です」

離された瞬間ちょっとヨロけたけど、大丈夫。

「ハナ、コーヒ―持って来て頂戴」

ぶっきらぼうに雪ちゃんが頼む。

「はいよ。江奈っちも同じで良い?」

「あ、はい」

「じゃ、ちょっと待っててね」

ハナちゃんがカウンターへと小走りで走って行く。