譲らない私に、雪ちゃんが少し考えてこう提案してくれた。

「じゃあ、分担にしましょうよ」

「……分担?」

「そ。江奈がこの家に居る間は、家事全般江奈の担当。で、アタシが家賃。これでどう?」

「……それ、私の方が楽じゃありません?」

眉をひそめ、本当にそれで良いのかと、尋ねる。だって、そんなの毎日やっていた事だし、家事は全く苦にならない。

「あら。楽じゃないと思うわよ?自慢じゃないけどアタシ、掃除にはきびしいんだから」

腰に手を当て、フフンと得意気にしている。まあ確かに、この広い部屋をこれだけピカピカにしているんだから、そうだと思う。

「今日江奈の部屋に行って、任せられると思ったから言ってるのよ」

「雪ちゃん……」

多分これ以上言っても、雪ちゃんは首を縦には振ってくれないだろう。それなら、雪ちゃんの提案を素直に受け入れる事にした。

「よしっ!そうと決まれば善は急げ!明日、買い物に行きましょう!冷蔵庫に何もないし、食器も足りないし、調理器具だって!」

ポンッと胸の所で手を合わせ、目をキラキラと輝かせている。

「え?あの……」

おまけに鼻息も荒く、なんだか興奮している。

「歯ブラシやバスタオルなんかも足りないわね。ネグリジェも、もう2、3着買って来て……」

「雪ちゃーん」

私の声が全く届いていない様で、一人ブツブツ言っている。

「あの…もしもーし」

雪ちゃんの目の前で、手をヒラヒラと振る。

「え?ああ、そうよね。早いとこ寝て、明日に備えましょうか」

「は?いや、そーじゃなくて……」

「じゃあ、アタシはもう寝るから、アンタも早く寝なさいね」

私の話は完全スルーで、そう言い残してさっさとリビングから出て行ってしまった。私は何がどうなったのかよく分からなくて、ポツン…とその場に一人取り残される。

すると、リビングのドアが薄く開き、雪ちゃんが顔を覗かせ、

「朝の10時にはここを出発するから。時間厳守よ。じゃ、オヤスミ」

と、それだけ告げて、今度は本当に自室へと帰って行った。


雪ちゃんと一緒にいて分かった事――。


「超マイペースだよね……」

良い意味か悪い意味かはとりあえず、また今度考える事にする。