「ウチの兄貴、整備工やってるから丁度なのよ。メンテもついでにやってもらえるしね」

「へ~、そうなんですか」

「江奈はご兄弟は?」

「兄が一人と、弟が二人います」

「あら、女の子は江奈一人?」

「はい」

「そう。じゃあ、お姫さまねぇ」

「そんなんじゃないですよ」

手をブンブンと振る。でも実際、お兄ちゃんは私に甘々だし、弟は私にベッタリで困る事も多々あった。

「さあ、着いたわ」

指差された方を見る。

「ここって……」

駐車場へ車を停め、外へ出る。雑誌やテレビで見た事がある、ステーキが美味しい、と有名なお店だった。今流行りの、熟成肉?とか言う……。

「一度来てみたかったのよね」

さっさかと雪ちゃんがお店の中へ入って行く。確かに、私も来てみたかった。でも……。

(お、お金…足りるかな……)

一瞬、お財布の中身を頭の中で確認する。私はてっきり、そこら辺の焼き肉屋さんにでも行くのかと思っていた。何も考えずに返事をしてしまったけど……。

このお店、美味しいって有名だけど、高くて有名なお店でもあった。