ボーッと立っているのもヒマなので、ちょっとロビーを色々観察してみた。

(あ、あんな所に小窓がある)

なんて、どーでもいい事を発見。

(あの子達、今から合コンか何かか?)

六人の女子社員が、団体でいそいそと会社を出て行く。

(気合い入った格好……)

メイクもバッチリしてあった。

「楽しそう……」

なんとなく、その六人を目で追う。

視線の先で、キラッ!と、通りを挟んだ向こう側から、また何かが光って見えた。私は、勢いよく光の方を見る。キラッとしたのはやっぱり一瞬で、今はもう光っていない。

ダッシュで外に出る。何も考えずに光った方へ走ろうと、グッ!と足に力を入れた瞬間、

「江奈っ!!」

名前を呼ばれて、私の足はピタッ!と止まった。振り返ると、黒のセダンから険しい顔を覗かせる雪ちゃん。

「あ……」

オールバックにメガネ(ついでに美形)の人がすごむと、ちょっとビビる。

「乗りなさい」

「……はい」

言われた通り、素直に従う。

「失礼します」

そう言って、車に乗り込んだ。私がシートベルトを締めた事を確認して、車が動き出す。

「アンタね、何の為にアタシが送って行くのか分かってる?」

「……はい」

「今、どこに行こうとしてたの?」

「えっと……」

私の答えを待たずに、はぁっ……と雪ちゃんが盛大に溜め息を吐いた。

「自ら危険に飛び込むなんて、バカじゃないの?」

「うっ……」

それはそうなんだけど、なんか段々腹が立って来て……。

「ホンット、目が離せないわね。良い?アンタから近寄ったら絶対にダメだからね?何かあったら、すぐにアタシに知らせなさい。約束よ、分かった?」

「……はい」

「うん」

雪ちゃんがやれやれ……みたいな顔で私の頭をよしよし、と撫でた。