「はぁ………」

終業のチャイムが鳴り、帰りの身支度を整え始める。いつもならさっさと身支度をしてさっさと帰るのに、今日は凄く憂鬱だった。

憂鬱(ゆううつ)そうだね」

咲希子がチョコレートをかじりながら私の気持ちを代弁する。コイツ、いつも何か食べてるけど全然太らないのはなんでだろう。

「そりゃそうでしょ……」

憂鬱にさせた張本人が、言うセリフだろうか。

「あ、そうさせたのはアタシか」

ポンッと頭を叩いた。

「……はぁっ!」

私はガクッと勢いよく項垂れた。

「まあまあ、そんなに落ち込まないで。もうそろそろだと思うから」

「……なにが?」

「ん?んふふふ」

咲希子は私の問い掛けに答えず、ニマニマと笑っている。

「そんじゃ、お先~」

ヒラヒラと手を振り、何も言わずに帰って行ってしまった。

「なんなのよ……」

私も早く帰ろう、と立ち上がった瞬間、人の気配がして振り向いた。そこには、

「……ゆ、雪ちゃん!?どうして!?」

紛れもなく雪ちゃんが立っていた。

「こーら。会社ではその呼び方禁止って言ったでしょ」

おでこをツン!と突つかれる。

「あ、ごめんなさい」

おでこをさすりながら謝った。でも、雪ちゃんだってオネエ言葉になっちゃってるよ。

「まあ、もう誰もいないみたいだし、良いけどね」

え?と思い、見回してみると、ここには私達二人しか残ってなかった。色んな事で混乱してて、気が付かなかった。

「さあ、帰りましょ。送って行くわ……ホラ、鞄持って」

「へ?……あ、はい!」

鞄を押し付けられ、慌てて抱える。

「あ、あの……なんで……」

「あら?サキコちゃんから聞いてない?」

先を行く雪ちゃんを小走りで追い掛けた。