そこには、書類を持ってゼーゼー言いながら額に汗をかいている男子社員がいた。津田部長を呼び止めたと言う事は、海外事業部の社員だろう。

「ご帰宅の所すみません!ちょっとここが……」

「どうした?……ああ、これは……」

どうやら書類とPCに保存されている何かの数字が違うらしく、男性社員は慌てふためいている。津田部長はその男子社員に訂正の仕方を分かりやすくかつ丁寧に説明し出した。

「美園さん、ちょっと……」

「あ、はい。そこで待ってます」

私はロビーの窓際にあるイスを指さした。

「すまない。すぐ終わるから」

「すみません、美園さん!」

津田部長の後に、男性社員が頭を深々と下げる。

「いえいえ、気にしないで下さい」

別に急いでないから、としきりに頭を下げる男性社員に伝え、窓際のイスに腰掛けて待つ事にした。

時刻は17時26分。

窓の外を眺めると、サラリーマンやOL、学生達が帰路についている。友達と帰る人。カップルで帰る人。一人で帰る人。色々な人達がいる。

「みんな、楽しそう……」

そんな風景をボーッと眺めていたら、急に肩を掴まれ、私は飛び上がった。

また津田部長の仕業だな、と思った私は、

「もうっ!津田部長、急に……」

そう言いながら振り向いた。

「!?」

しかし、振り向いた先には津田部長ではなく――。


笹木が立っていた。