いつもの様に、人の話をよく聞かず嵐の様に去って行く咲希子。

「……なんて言うか、嵐の様な子ね……」

津田部長もまったく同じ事を思ったらしく、呟いた。

「……すみません」

私はいたたまれず、頭を下げる。

「別に謝る事じゃないわよ。楽しそうな子じゃない。さ、帰りましょうか」

津田部長がスタスタとエレベーターの方へ歩いて行きボタンを押した。

「え?あの、どこかに用事だったんじゃ……」

「何を言ってるの?アンタを迎えに来たに決まってるじゃない。その他にこのフロアに用事なんて無いわよ」

「そ、そうなんですか?」

てっきり、何か用事があってこのフロアにいたんだとばかり思っていた。それが私を迎えに来てくれた……?

(ど、どうしよう。めっちゃ嬉しい)

ニヤけが止まらない。

「それに、あの子にも頼まれちゃったしね」

津田部長が、パチンッとウインクをする。

(おぉうっ!)

こんな事言うの失礼かもしれないけど、

(か、可愛い……)

私は、ニヤける顔とドキドキと高鳴る胸を押さえてよろめく。

「さ、アホな事してないで、エレベーター来たわよ」

急に真顔になった津田部長は先に乗り込み、「開」のボタンを押して待っていてくれる。高鳴る胸を強引に鎮めて、急いで乗り込んだ。

「ありがとうございます」

「いーえ」

扉が閉まり、目的の一階へとエレベーターが動き出す。