「お腹いっぱいです~」

会社に戻る道すがら、私は満腹のお腹をポンッと叩いた。

あの後、『ハナちゃん特製ジャンボプリン~あまぁいカラメルソースは恋の味♡~』なる物と、ずーっと良い香りを漂わせていたコーヒーをご馳走になった。それはそれは美味しかった。

コーヒーは変な雑味なんてない透き通った味で、酸味・苦味がモロに私好みだった。プリンも舌触りがなめらかで、たっぷりかかったカラメルソースは確かに恋の味だった。

……多分。よく分かんないけど。

「みっともないわねぇ。オナゴのする事じゃないわよ」

「オナゴって……」

津田部長の言い方に、私はプッと吹き出す。

「それより。さっきハナと何かコソコソ話をしていなかった?」

「へ?……あぁ、あれは……」

会計を終え、お店を出ようとした所で急にハナちゃんに腕を掴まれ、「今度は夜にゆっくり来て頂戴。水曜日が定休日で、それ以外はやってるから。色々聞かせて♡」と耳打ちされた。

「で?なんだったの?」

「気になりますか?」

私は、むふふと津田部長の顔を覗き混む。

「なったから聞いてるんじゃない」

「……ナイショです」

「なっ……!」

「へへ~ん」

「ちょっと!教えなさいよ!」

津田部長は、興奮気味に声を荒げた。

「津田部長。オネエ言葉が戻っていませんよ」

「あっ……」

慌てて口を押さえる。

「誰かに聞かれたらどうするんです?」

「……気を付けるわ」

私の言葉に、うん、と頷く。