「は~。ここは涼しいわね~」

手でパタパタと顔を扇ぎながらロビーを歩いていると、すれ違う社員達が私達に声を掛けて来る。

「津田部長、お早うございます」

「はい、おはよう♡」

「津田部長、今日もお綺麗ですね」

「あらん、ありがと♡」

そんな声に紛れて、

「美園さんも、お綺麗ですね」

と、珍しく私にも声をかけて来た男性社員がいて、

「え!?…あ、ありがとうございます」

と、私は照れながらその人にお礼を言った。

その瞬間、グイッ!と雪ちゃんに腕を引っ張られ、ほっぺにチューをされた。誰かが発した『キャーッ♡』と言う声が、ロビーに響く。

「なっ!」

私はチューをされた頬を押さえながら雪ちゃんを見る。

「江奈はアタシのだからね♡ダメよ♡」

そう声を掛けて来た男性社員に向かって言った。顔は笑ってるけど、目は笑っていない。男性社員は、すごすごと通り過ぎて行く。

はぁ……と、私の口から溜め息が漏れた。

「……雪ちゃん。恥ずかしい」

グイッと、近すぎる雪ちゃんの顔を押し戻し、私はエレベーターへと歩き出す。

この嫉妬深さ、どうにかならないかな。