「雪ちゃん」

「んー?」

「あの時って、どの時……?」

「え?それは……あっ!」

雪ちゃんは、しまった!と言う顔で口を(てのひら)で隠した。

「……雪ちゃん。『酔って記憶がない』って言ったの、ウソだったのね!?」

私は顔を真っ赤にして、拳をブルブルと震わせる。

「わーっ!ごめん!」

ガバッ!と起き上がり、雪ちゃんが頭を抱えた。

「だって!あの時はそうした方が良いと思って!悪気は全くなかったのよ!」

顔の前で両手を合わせ、「許して!」と雪ちゃんが叫んだ。

「……もう良いよ」

私はプルプルと震えた拳を下ろし、溜め息混じりに言った。

「許してくれる?」

「……まあ、私も本当の事を言わなかったし、同罪と言う事で」

「ありがとー♡江奈ちゃん、大好き♡♡」

勢いよく抱き付かれる。

「わっ!あぶなっ!!」

勢い良すぎてバランスを崩して倒れそうになった。「ん~♡」と、頬擦りをされる。あ……やっぱり男の人なんだ。髭がチリチリと痛い。

なんて感心していたら、雪ちゃんが急に立ち上がり、ガバッ!と、私を軽々と抱え上げた。所謂、お姫様抱っこってやつ。