「ハナちゃん!」

ハナちゃんは靴を履き終え、まさに玄関を出て行こうとしている所だった。

「ごめんね、なんか……」

せっかく招待したのに、申し訳ない気持ちになって私はシュンとした。

「江奈っちのせいじゃないわよ。アイツが心狭すぎるの」

ポンポン……と、ハナちゃんの大きな手が私の頭を撫でる。

「……あの人のヤキモチ、並大抵じゃないけど愛想尽かさないでやって……雪ちゃんの事、幸せにしてやってね」

「ハナちゃん……」

あんな酷い態度を取られたのに、ハナちゃんは雪ちゃんの幸せをこんなにも願っている。だから尚更、雪ちゃんのあの態度が悲しくなる。

私は、ハナちゃんを不安がらせない様に力強く頷いた。

「よしっ!じゃ、帰るわね!お店にも、また来て頂戴よ♡」

「うん、必ず!」

じゃあね、と手をヒラヒラと振りながらハナちゃんは帰って行った。

パタン……と静かに閉まった玄関を暫く見つめる。

「ハナちゃん、ありがと。大好き……」

そう呟いて、リビングへと戻った。