「ゆ、雪ちゃん!?いつからそこに!?てか、ノック位してよ!」

そこには、ドア枠を背に、腕を組んで立っている雪ちゃんがいた。ドアに背中を向けてベッドに座って話していたから、気が付かなかった。

「……何回もしたわよ。ハナとの電話に夢中で聞こえなかっただけでしょ」

「それにしたって勝手に……」

そう言って立ち上がり、不意に雪ちゃんを見て今度は本当に心臓が飛び出た。

雪ちゃんはどうやら寝起きみたいで、素肌にバスローブを羽織っただけの格好だった。ウエストの紐を弛く結んでいるせいで胸元ははだけ、足も露になっている。それがとてもセクシーで、目のやり場に困る。

「と、とにかく!勝手に入って来ないで!うるさくしたのは謝るから!」

私は目をそらしながら声を荒らげた。

「……そんなにハナが良いの?」

「え……?」

意外と近くで声がして、顔を上げる。

「アタシより、ハナと話をしている方が楽しそうだものね」

「ゆき…ちゃん……?」

怖い顔をして、ジリジリと雪ちゃんが迫って来る。

私は逃げる様に後ずさった。

「アタシには言えない事も、ハナには相談してるみたいだし?」

「そ、そんな事……」

「無い、とは言わせないわよ」

「うっ……」

確かに、色々ハナちゃんに相談したけど……。

(しょうがないじゃない!雪ちゃんを好きになった。なんて、本人に言えないんだもん!)

トンっ、と壁に背中がぶつかる。これ以上は下がれない。

それでも迫って来る雪ちゃんを避けようと横に逃げた瞬間、バンッ!と、雪ちゃんの腕で遮られた。

「っ……!」

人生2回目の、『壁ドン』。

「あ、あの……」

「アタシの苦しさ、思い知れば良いんだわ……」

「ゆ……」

その後の言葉は、雪ちゃんの唇に吸い取られた。