あ、ごめん。ウソ。そんな感覚がしただけで、実際飛んだのは1~2mm。

でもビックリしたのは嘘じゃないから、驚かして来た人をキッ!と睨み付ける様に振り向いた。

そこには、目を丸くし私の驚きに驚いている津田部長の姿。

「……津田部長!ビックリするじゃないですかっ!」

ったく、なんなのよ!?私は囁かれた耳を手で押さえた。

う~。まだくすぐったい。

「そんなにビックリしなくても」

津田部長が、プッと吹き出し笑い出す。昨日見た、儚い笑顔とは全然違う。口を大きく開け、まさに大笑い。

(わ……こんな顔して笑うんだ……)

私だけじゃない。大爆笑している津田部長に周りの人達も呆気に取られ、一瞬、業務がストップする。

シーン…と静まり返ったオフィスから、チラホラとコソコソ話が聞こえて来る。

『え?今の津田部長の笑い声?』

『津田部長、笑ってねぇ?』

『あんな風に笑うの、初めて見た』

『いやーん、部長笑ってる~♡』


それから、


『てか、部長の隣にいる女、誰?』

『秘書課の美園さんじゃない?』

『なんで?』

『秘書課がなんの用?』


と言う、段々矛先が私へと変わって来るコソコソ話が聞こえ始めた。