しかし雪ちゃんは特に気にする様子もなく、いつもとは違う、厨房の真ん前のカウンターに座った。ハナちゃんが、雪ちゃんの前にコーヒーを置く。いつも通り、とても良い匂い。

「じゃあ、始めましょうか!」

「はい!ハナちゃん先生、宜しくお願いします!」

私はハナちゃんに向かってお辞儀をした。

「あらやだん、『ハナちゃん先生』だなんて~♡」

照れながら体をクネクネさせる。それを見て雪ちゃんが、「気持ち悪いわよ」と、コーヒーをすすりながら言った。

「ぬぁんですってぇ~!?」

ハナちゃんのこめかみがピクピクしている。

「雪ちゃん!ハナちゃんに失礼でしょ!?」

私は雪ちゃんを一喝した。すると雪ちゃんは、フンッ!と頬杖を付いてそっぽを向く。この二人は仲が良いんだか悪いんだかホント分かんない……。

「江奈っち、こんなヤツ放って置いて早く始めましょう!」

「はい!」

私は、メモを片手に気合いを入れる。

「まずは……」

ハナちゃん先生の『スコーン作り教室』が始まった。