私は、重たい荷物を軽々と持ってキッチンへと運ぶ雪ちゃんの後姿を見て笑った。

それと同時に切なさも込み上げて来て、目に涙が滲む。

「江奈~?」

「はーい!」

キッチンから雪ちゃんの声がして、返事をする。

恋心に気付いた瞬間に失恋した私の想い。今はまだ心が痛むけど、時間がきっと解決してくれる。

そうだ。午後から雪ちゃんと一緒にクッキーを作ろう。恋人になれないなら、一番の友達になればいい。

「うん。大丈夫……」

少し滲んだ涙を、グイっと拭った。

「江奈ってば~!」

「はーい、今行きまーす!」

そう気持ちを新たに、笑顔で雪ちゃんのいるキッチンへと向かった。


――あ、ちなみに、雪ちゃんにお菓子作りの才能は全く無く、9割方私が作る羽目になったんだけどね。