小夜啼鳥が愛を詠う

えーとー。

「それって、光くんはリア充じゃないってことを言いたいの?」

そう確認したら、野木さんは真面目にうなずいた。

「どう見ても小門兄は違う。もちろん、私も、さくら女も、違う。……菊地パイセン、椿氏、春秋先生らリア充との決定的な差は、……うーん……まめ?」

まめ……。
確かに、めんどくさがってたり、恥ずかしがって様子を見てるだけじゃ何も始まらない、か。

「でも、まめなヒトって、裏で浮気とかしそう。」

私が一般論でそう言ったら、明田先生が遠慮がちに言った。

「浮気は、ぶしょうでも、する奴はするけどな。」

……そうね。
でも、それ言っちゃうと、身も蓋もないわ……。



「というわけで、京都の窯元に見学に行くけど……光くん、行かないよね?」

アトリエに戻ると、光くんがふて寝してた。

「興味ない。」

……そうよね。
うん。
わかってた。

とりつく島もないね。

玉砕してしょんぼりしてる私の肩を、野木さんがポンと叩いた。



11月に入ってすぐの土曜日の朝。
野木さんとJRで京都へ向かった。

「すごい荷物ね。泊まるわけでもないのに。何持ってきたの?カメラとスケッチブックだけじゃないよね?」
大荷物の野木さんにそう尋ねると
「カメラと、ビデオカメラと、三脚2セットと、スケッチブック?」
と、首をひねりながら答えてくれた。

三脚2セットは、重そうだなあ。

「逆にさくら女(じょ)は軽装過ぎ?」

野木さんの言う通り、私は小さなバッグと、手土産の紙袋のみ。
夕べ、ママと一緒に作ったマカロンがいっぱい入ってる。

「マカロン……。女子力高ぁーい。」
「……リア充じゃないけどね。」

嫌味じゃなくて、合い言葉のようにそう言って笑った。


京都駅を一つ過ぎた駅で降りると、改札のところに朝秀先生が立っていた。

「……ほら、リア充。今日は黒づくめ……に、あれ、確かエルメスのアクセサリーだったような……。」
野木さんのつぶやきに、私の笑顔も少し引きつった。

なるほど。
黒い革のジャケットに、黒いシャツに、オレンジのポップアッシュが燦然とその存在価値を主張していた。

「ほんとだ。彼女さんとお揃いとかかな。」
そうつぶやきつつ、改札に近づく。

「複数の彼女たちとオソロかも。……彼氏もいたりして。」

野木さんの願望に苦笑しつつ改札を通った。

「おはよう!野木ちゃん、すごい荷物やな。貸して。持つわ。……重っ!」
朝秀先生は笑顔でおどけた。

緊張感を抱かせないヒトだなあ。
……確かに、彼女や彼氏が複数いても不思議じゃないか。

朝秀先生の車は、これまた、いかにもな外車。
赤いベンツSUV。

……ベンツの四駆車って感じ?

「てっきり花形満のようなオープンカーかと思ったのに。」
野木さんが残念そうにそうぼやいた。