小夜啼鳥が愛を詠う

「……また買う気か?知らん知らん。久しぶりすぎて、見当もつかんわ。」
「うーん。ひと昔前は10万円で落札できたけど、今回は受賞作の習作だしなあ……30万ぐらいにしとくか。」

え!
そんなに!?

野木さんも私も、朝秀先生の言葉にびっくりして明田先生を見た。

明田先生は、顔をしかめた。
「……言っとくけど、俺はそんなご大層な画家じゃないぞ。こいつが、勝手に高値をつけて、俺の相場を上げよったんや。おかげで、他では、売れんわ。……30万て。勘弁してくれ。」

「チャリティーでいくらで落札されたか、ってのが相場になるんですね。……でも、チャリティーだから、そのお金は明田先生には入らないってことですよね?」

なるほど。
分不相応な高値は、むしろ、いい迷惑なのかもしれない。

「いや、せやから。全部、俺に売ってくれはったらいいじゃないですか。」
平然と朝秀先生はそう言ったけど、明田先生はため息をついた。

野木さんもまた、ため息をついた。
「……野木も欲しいのに……そんな値段じゃ、買えない。」

朝秀先生が首を傾げた。
「野木ちゃん、明田さんの絵が欲しいんや。……ほな、今度、桜子ちゃんと一緒にうちにおいでーな。彩シリーズ以外なら、あげるわ。」

「おい!俺の絵を餌にするな!」

明田先生は文句を言ったけど、野木さんはすっかりその気になっちゃった。

「是非!……春秋先生の作品も見せてください!可能なら、窯も……。」

さすがに図々しいお願いじゃない?

でも、朝秀先生はあっさり快諾した。
「ええで。でも登り窯は、焼いてへん日のほうが圧倒的に多いで。観たいんは、火ぃか?焼いてへん時の窯か?」

野木さんは、目をキラキラさせて前のめりになった。
「はい!作品を入れるところ、温度が上がってゴーゴー燃えてるところ、それから、窯出し!野木は全部興味あります!迷惑かけませんから、よろしくお願いします!」

……いやいやいや。
図々し過ぎるって。

「野木……。欲ばりすぎだ……。」
さすがに、明田先生もそうたしなめた。

でも、朝秀先生は笑顔で言った。
「全然。うれしいですよ。女子高生2人と3回もドライブできるなんて。」

「……。」
明田先生は、完全に呆れていた。


帰る道々、朝秀先生の名刺を眺めながら野木さんが言った。

「容姿がイイだけじゃリア充じゃないって、つくづく思った。」