小夜啼鳥が愛を詠う

「逢ったんはいっぺんだけやわ。……えーと、俺のツレと、光くんが、昔、京都で、同じ空手教室に通ってたんやっけ?な?覚えてるんやろ?あの時も、俺、光くんに嫌われたみたいで、ツレに、あっち行けって邪魔にされて、一緒に遊べへんかってん。」

空手教室……京都……。

「光くん、さっきの?」
2人がかりで光くんをじっと見た。

光くんは天を仰いでため息をついた。
「そうだよ。坂巻孝義さんだよ。……その節は、どうも。朝秀春秋さん。」

……本気で嫌そう。
よっぽど気に入らないのかしら。

「やー。なんか、パズルがバッチリはまった感じ。あの光くんと、桜子ちゃんかー。で、明田さんのアレも、光くんなんや。へー。明田さん、よく見つけたなあ。すげぇご縁や。」
朝秀先生は独りで妙に納得していた。
でも、私にはよくわからなかった。

13時過ぎに、一旦会場を出て、ランチに行った。

なぜか、朝秀先生も一緒だった。
そのせいで、光くんは終始無言。
明田先生が心配そうに光くんを気遣っていた。

「春秋先生の作品、拝見しました!野木は、今度は彩色画を拝見したいです!」
「野木ちゃん?かわいいのに面白い話し方するんやなあ。君は、絵ぇ描くん?」
「はい!描きます!明田さんのファンです!」
「……はあ~。明田さん、モテモテ。いいなあ。俺も、教師になろうかなあ。」

野木さんと朝秀先生の会話に、明田先生がたまに加わった。
「教職課程なんか、とっとらんやろーが。……そんなことより、オヤジさん、大丈夫か?」

「……もしかして、朝秀……冬夏(とうか)先生?陶芸の?」
野木さんが首を傾げた。

その名前は知ってる!
人間国宝だ!

「やー。元気やけど、左手が不自由になってしもて、本人は引退や、ゆーてます。」
「……そうか。」

脳梗塞か何かかな?
陶芸家の片手が使えなくなったら……もう、作品は作れないのかな。

朝秀先生は、終始、笑顔で気さくに話してくださった。
話術が巧みで、楽しいヒトだった。

ランチの途中で光くんが席を立った。
トイレだろうと思ったんだけど、光くんは帰って来なかった。

「なんか、懐かしいかも。小門兄、小学生の時はよく消えてた。……ここ数年、あれでも落ち着いてたんだ。」

野木さんのつぶやきに、苦笑してうなずいた。
ほんと、人見知り、マシになってたのにね。

「あーあ。また逃げられたか。ま。いいや。明田さん。今回の絵ぇ、相場いくらぐらいになりそう?」

朝秀先生は明田先生の絵を入札する気らしい。