小夜啼鳥が愛を詠う

夏休みに入ると、光くんは薫くんも伴ってサッカー部の見学を始めた。
中学に入学したらサッカー部に入ると決めている薫くんには、すごく刺激的だったらしい。

まあ、大好きなパパの頼之さんも、おじいちゃんの成之さんも在籍してたんだもんね。

薫くんは持ち前の人懐っこさで、菊地先輩だけじゃなく、他の部員やマネージャーにもかわいがられた。

光くんが来なくなっても、薫くんは毎日のようにサッカー部に混じった。

そして、薫くんにとっては、すごい情報を得てきた。
「二学期になったら中学サッカー部に未来(みらい)さんが来るねんて!フランスから!」

みらい、さん?
フランス?

「フランス人?留学生?」

意味がわからない私に藤巻くんが説明してくれた。

「ううん、日本人。親御さんがプロサッカー選手で、彼も小学生の時から注目されてはってん。去年、その父親がフランスのリーグ・アンに所属してるレ・ヴェールっていうクラブチームと契約したから、彼もフランス行ってはったんやけど、彼だけ帰国してんて。おじいちゃんおばあちゃん家に住むって。」

……なんか、聞いたような話だな。

「ふーん?なんて選手?」

元気いっぱいに薫くんが答えてくれた。
「佐々木未来!」

ささき、みらい?
あ、それで、未来さん、ね。

「佐々木って……前に、光くんがチャリティーで入札してた選手?」

でも、薫くんは首を傾げた。
「知らん。でも未来さんのパパは、佐々木和也や。知っとーやろ?地元の有名人やで!」

……そんな名前だったっけ?

「ごめん。あんまり知らない。でも、その未来くんも強いの?……今中1なら、薫くんが中学サッカー部に入る時、未来くんは中3か。……先輩になるのね。」

薫くんはうれしそうに、ぶんぶんと首を縦に振った。


二学期になると、薫くんと藤巻くんは中学サッカー部の練習をフェンス越しに覗きに来るようになった。

「小門の弟?……はは。君はお父さんによく似てるな。サッカー部に入るのか?」
明田先生は、くしゃくしゃと薫くんの頭を撫でた。

……光くんとの初対面の時とは全然違うな。

「古城は、弟くん達の付き添いか?」
「……はあ。」
「そうか。……ほんとに、家族ぐるみで仲いいんだな。」

明田先生は、私にそう言ってから、薫くんに向かって言った。

「このお姉さんは、しっかりしてるようで、自分の魅力には無頓着で危ういからな。お兄さんの代わりにしっかりガードしてやってくれ、な。」

すると、薫くんは笑顔でうなずいた。

「知っとーで。桜子も光も、俺が守る。」