「で?つきあうん?彼氏彼女確定?」
翌週、椿さんにそう聞かれて……私はすぐに返答できなかった。

「……わかんない。」

椿さんは眉をひそめた。
「野木のラインで、事のあらましはわかったけど……さっちゃん、キープされとーるんちゃう?」

キープ?

「都合のいい女ってこと?」
自分でそう聞いといて、笑ってしまった。
光くんに求められるなら、遊びでも、性欲の解消対象でもうれしいけど……そうはならないよね。

「むしろ、光くんにとっては明田かな……都合のいい男。」
椿さんはそう言って、廊下の窓から身を乗り出した。
「あの家?……へえ。けっこうおっきいやん。私も遊びに行っていい?」

「もちろんいいと思うけど、椿さん、そんな暇あるの?」

学校では仲良くしてるけど、放課後も土日も、椿さんはお稽古漬け。
アトリエに居着く時間あるのかしら。

「えー。教師が休んで自習になった時とかー、テスト前の一夜漬けとかー、……彼氏といちゃつくのに、ちょっと借りるとかー……。」
「彼氏!?いるの!?いつから!?」

びっくりしてそう聞くと、椿さんが肩をすくめた。

「いたらとっくに紹介しとるって。……ちょっとね、モチベーション下がっとーから、起爆剤がほしいなあ、って。芸の肥やしにもなるし。適度にがっついたイケメンおらんかなー。それこそ、都合のいいイチャイチャするだけの男。」

……えーとー。
大人びてるとは思ってたけど、椿さん……オトナだわ。

「そんな都合のいいヒト……あ、いた。」
いない、と言おうとして、思い出した。

先週知り合った……というか、襲われかけた菊地先輩。
あの人ならイケメンだし、がっついてるわ。
頭のいい美人が好きと言ってたから……成績はともかくクールビューティーな椿さんなら合うんじゃないかな。

でも、椿さんは勘違いしたらしい。
「えー。さすがにそれは、遠慮するわ。さっちゃんに悪い。……まあ、光くん、経験豊富そうだし、興味あるけど……親友の好きな男とHするのは、美学に反するわ。」

……はあ?

「光くんじゃないけど。……てか、光くんって……経験豊富なの?」

もやもやしてきた。