その夜は、興奮して眠れなかった。
光くんの気持ちを推し量る。
正直なところ、愛されてる実感はない。
光くんの瞳に私に対する恋慕は感じられない。
でも、キスしてくれた……。
お嫁さんって言ってくれた……。
私……自分で思ってた以上には、好きって思ってもらえてるのかな。
……わからない。
自信がない。
てか!
そもそも、光くんの心を私に読めるわけないのよね。
考えるだけ無駄無駄。
寝よっ。
……。
ふふっ。
光くんと、キスしちゃった。
きゃっ。
……たぶん光くんの思惑通り……私は、菊地先輩からの被害をほぼスルーできた。
ただただ、光くんへの想いに胸を熱くした夜だった。
翌土曜日の朝、お店の開店前に、パパがアトリエ候補の物件に連れてってくれた。
てっきりマンションの一室だと思ってたら、築40年の平屋だった。
しかも、高校の通用門から目と鼻の先!
光くんが即決し、菊地先生はその場で契約書に判を押した。
……野田さんなんか、既に在庫の同人誌置くつもりで持ってきてるし。
「日照権交渉がうまくいかなくて、建て直せなくてね。少し前まで貸してたから、住むことも可能だけど……宿泊禁止だからな。」
パパは、明田先生ではなく、私と、それから光くんに、わざわざ念押ししてそう言った。
……でも一番お泊まりしちゃう可能性の高いのは、野木さんかもしれない。
集中すると、寝食も忘れるそうだから……絵も同人誌も。
「監視カメラも盗聴器もつけたいけど、野暮だよな。我慢するけど、わきまえてくれよ。」
光くんにそう言って、パパは明田先生に家の鍵を手渡した。
マスターキーが一本と、スペアキーが三本。
「野暮ですねえ。こんなムードのないところで、大切な大切なさっちゃんを衝動で傷つけるようなこと、しませんよ。」
え……。
私も、パパも、明田先生も、目も口も開いて光くんを見た。
野木さんだけが、片眉をピクリと上げるのみで、冷静に見ていた。
光くん?
昨日、菊地先輩にも私が期待しちゃうようなこと言ってたけど……本気じゃないよね?
「光くん?君、なに言ってるんだ?桜子と君は、ただの幼なじみ……お友達だろう?」
ソレを聞いちゃうパパが何だか気の毒に感じた。
ホントに野暮だとも思うけど……心配してくれてるのよね。
私はパパの腕に手を絡めて、パパの顔を見上げて言った。
「……ありがとう。心配しないで。大丈夫だから。」
どうせ対象外。
家族の次に気を許せる幼なじみ。
あの日、京都からの帰路、そう諦めたの。
だから昨日のキスも……キスも……キス……
ダメだ。
思い出したら、頬が緩んできちゃいそう。
私は慌てて口元を引き締めた。
パパはそんな私をじっと見つめて、天を仰いだ。
「……頼むよ。ほんとに……。」
光くんはパパにうなずいて見せてから、私にニッコリとほほえんだ。
……そのほほえみは……なるほど、天使でも妖精でもなくて……。
「……ルイ、アントワーヌ、レオン、フロレル……」
ぶつぶつと野木さんが心の声を漏らす。
最後まで聞かなくても、何となくわかった。
野木さんはたぶん創作活動のネタにするのだろう。
「じゃあ、早速、掃除するか。」
気を取り直して、明田先生が号令をかける。
「はい!」
野木さんが敬礼でもしそうな勢いで、従順に返事した。
「えー。昼まででいい?さっちゃんを連れて帰るって、あーちゃんに約束してるんだ。」
光くんの言葉に、パパと明田先生は、力なくうなずいた。
光くんの気持ちを推し量る。
正直なところ、愛されてる実感はない。
光くんの瞳に私に対する恋慕は感じられない。
でも、キスしてくれた……。
お嫁さんって言ってくれた……。
私……自分で思ってた以上には、好きって思ってもらえてるのかな。
……わからない。
自信がない。
てか!
そもそも、光くんの心を私に読めるわけないのよね。
考えるだけ無駄無駄。
寝よっ。
……。
ふふっ。
光くんと、キスしちゃった。
きゃっ。
……たぶん光くんの思惑通り……私は、菊地先輩からの被害をほぼスルーできた。
ただただ、光くんへの想いに胸を熱くした夜だった。
翌土曜日の朝、お店の開店前に、パパがアトリエ候補の物件に連れてってくれた。
てっきりマンションの一室だと思ってたら、築40年の平屋だった。
しかも、高校の通用門から目と鼻の先!
光くんが即決し、菊地先生はその場で契約書に判を押した。
……野田さんなんか、既に在庫の同人誌置くつもりで持ってきてるし。
「日照権交渉がうまくいかなくて、建て直せなくてね。少し前まで貸してたから、住むことも可能だけど……宿泊禁止だからな。」
パパは、明田先生ではなく、私と、それから光くんに、わざわざ念押ししてそう言った。
……でも一番お泊まりしちゃう可能性の高いのは、野木さんかもしれない。
集中すると、寝食も忘れるそうだから……絵も同人誌も。
「監視カメラも盗聴器もつけたいけど、野暮だよな。我慢するけど、わきまえてくれよ。」
光くんにそう言って、パパは明田先生に家の鍵を手渡した。
マスターキーが一本と、スペアキーが三本。
「野暮ですねえ。こんなムードのないところで、大切な大切なさっちゃんを衝動で傷つけるようなこと、しませんよ。」
え……。
私も、パパも、明田先生も、目も口も開いて光くんを見た。
野木さんだけが、片眉をピクリと上げるのみで、冷静に見ていた。
光くん?
昨日、菊地先輩にも私が期待しちゃうようなこと言ってたけど……本気じゃないよね?
「光くん?君、なに言ってるんだ?桜子と君は、ただの幼なじみ……お友達だろう?」
ソレを聞いちゃうパパが何だか気の毒に感じた。
ホントに野暮だとも思うけど……心配してくれてるのよね。
私はパパの腕に手を絡めて、パパの顔を見上げて言った。
「……ありがとう。心配しないで。大丈夫だから。」
どうせ対象外。
家族の次に気を許せる幼なじみ。
あの日、京都からの帰路、そう諦めたの。
だから昨日のキスも……キスも……キス……
ダメだ。
思い出したら、頬が緩んできちゃいそう。
私は慌てて口元を引き締めた。
パパはそんな私をじっと見つめて、天を仰いだ。
「……頼むよ。ほんとに……。」
光くんはパパにうなずいて見せてから、私にニッコリとほほえんだ。
……そのほほえみは……なるほど、天使でも妖精でもなくて……。
「……ルイ、アントワーヌ、レオン、フロレル……」
ぶつぶつと野木さんが心の声を漏らす。
最後まで聞かなくても、何となくわかった。
野木さんはたぶん創作活動のネタにするのだろう。
「じゃあ、早速、掃除するか。」
気を取り直して、明田先生が号令をかける。
「はい!」
野木さんが敬礼でもしそうな勢いで、従順に返事した。
「えー。昼まででいい?さっちゃんを連れて帰るって、あーちゃんに約束してるんだ。」
光くんの言葉に、パパと明田先生は、力なくうなずいた。