小夜啼鳥が愛を詠う

「会社に頼之(よりゆき)くんだけじゃなくて、あおいちゃんも入社してもらいたいんだって~。でも玲子が怒ってるらしくて~、帰って、ご機嫌取るんだな。」

そう言って、クスクスと笑った。

れいこ?
それって、ママのお友達の玲子さん?

あれ?
何だか、違和感。

「章さん!さっちゃんの前でそんな話……」
慌ててママがパパをたしなめた。

けど、私はそっとママの腕を取った。

「ママ。何となく、光くん家(ち)が、普通じゃないことはわかってるから。……4月から神戸に戻って来はるなら、これから会う機会、増えるでしょ?できたら、ちゃんと、教えてほしい。」

ちょうどいい機会だと思った。

でもパパもママも、変な顔になってしまった。

パパは酔いが醒めたらしく、真顔で言った。

「あー、桜子。普通とか普通じゃないとか、そう区別するのはよくないな。どこの家にも、他からは見えない色んな問題があるもんだ。他人が興味本位で知ろうとするもんじゃない。」

……パパ?

怒ってる?

意味が分からない。

私が返事できないでいると、ママが私の肩をそっと抱いた。

「ごめんね。さっちゃん。……もう!章さんが悪いのよ!さっちゃんの前でデリカシーないことばっかり言うから!さっちゃんはもう子供じゃないの!頭も体も、もうオトナなの!いつまでも頭ごなしにごまかせないわよ。」

……いや、ママも、けっこうデリカシーないこと言ったよ。
少し前、初潮を迎えたことを、強調してるよね……今の言い方じゃ。

気恥ずかしくて、うつむいた私に、パパがため息をついて、謝った。

「そうか。そうだよな。ごめん。……でも、まあ、いい機会か。なっちゃん、話していいか?」
「……そうかもしれませんね。……お願いします。」

ママもまた、ため息をついた。

2人の様子に、何だか私も緊張してしまった。


リビングルームのソファに移動した。
パパはママの入れてくれた冷たいお水を一息に飲み干してから、口を開いた。

「パパは桜子のことが大好きだ。桜子を信じてる。」

今さら?

え?
何?

……光くんのお家の事情を聞く……んだよね?

何か、主旨が変わってない?

「あの……光くんのお家……」
「ああ。そうだな。でも、他人様の家のことだけをおもしろおかしく言うことはできない。先に、聞いてほしい。」

へ?
パパ、何を言おうとしてるの?

思わずママを見た。

ママは少し震えてるように見えた。
顔色も、なんだか青白い。