小夜啼鳥が愛を詠う

驚いて、キョロキョロしたら
「あほか!普通にしとけ!」
と、怒られてしまった。

……怖い。

えーと……でも、一応、これは、ナンパじゃなくて、助けてくれてるんだろうか。

「うち、どこ?こっち?」
彼に肩を抱かれたまま、学校の門を出る。

「こっちです。……あの、近くなので、ここで……。」
そう断るんだけど、彼は
「いいからいいから。」
と、放してくれない。

諦めて、国道の地下道にもぐると、やっと彼が自己紹介らしきことをしてくれた。
「2年の菊地や。サッカー部。自分、今年の総代やって?俺、頭のいい美人に弱いねん。つきあわへん?」

……自己紹介に、告白が漏れなくついてきちゃった。

「助けていただいたそうですが、ごめんなさい。好きなヒトがいます。……だから、そろそろ手を放していただけますか?」

なるべくしおらしく、怒らせないように、そう言った。

でも菊地先輩は、めげないヒトらしい。
「お。ラッキー。彼氏ちゃうんや。まあ、彼氏でも、奪うけどな。」
と、穏やかじゃないことを言った。

「……無理です。ごめんなさい。」
そう言って、また菊地先輩から離れようとした。

けど、やっぱり放してもらえない。

「マークは得意やねん。ほら、行くで。」
菊地先輩は自信たっぷりにそう言って、地上へと私をいざなった。

夕日が、まぶしい。
西からの日差しに目が眩んだ。

右手をかざして遮光しようとした……ら、菊地先輩がその手をつかんだ。
「え?」
びっくりして菊地先輩を見た。
ら、菊地先輩の顔が近づいてきた!

よけたけど、かすかに唇が……当たった気がする。

嘘っ!
こんなとこで、こんな!
ひどい!
いきなりキスとか、信じられない!

私は必死で身をよじり、顔を背けた。

菊地先輩は舌打ちして、両手で私の顔を捉えた。

無理っ!

あいた両手を思いっきり前に押して……突き飛ばしたつもりだった。
でも、身体は少し離れても、顔は捕まったまま。

やだーっ!

ボロッと、涙がこぼれ落ちた。
大粒の涙が後から後から溢れてくる。

でも、菊地先輩は笑った!
「……そそるわ。」
そう言って、涙をベロリと舐めた。

気持ち悪くて、背筋がゾゾゾッとした。

変態!
ダメだ。
助けてっ!

私はジタバタと暴れた。

「そういうときは、まず、大声を出して助けを呼ばなきゃ。」
天から、呆れたような声。

続いて
「うわっ!」
と、菊地先輩が声を挙げて、私から両手を放した。

目を開けると、涙の向こうで、光くんが菊地先輩の両腕を掴んでいた。