小夜啼鳥が愛を詠う

実際、薫くんはかなりできる子だった。

受験から解放された私は、薫くんが春休みに入ると、ほとんど毎日のように襲来を受けた。
藤巻くんを誘って須磨まで足を延ばすこともあったけど、だいたいは薫くん家(ち)周辺にいた。

少し前までは、薫くんとは囲碁も連珠もいい勝負だったはずなんだけど……気づいたら、薫くんは私よりずっと強くなっていた。
ものすごく、くやしかった。

「囲碁部ってあるのかな。入部しようかな。」

高校の門の前でそうつぶやいたら、光くんが首を傾げた。

「どうして?……確か、囲碁・将棋部があったけど……さっちゃん、かなり強いから、相手にならないと思うよ?やめといたら?」

強い?
私が?

「……強くないもん。光くんにも、薫くんにも、勝てないもん。」

ちょっとむくれてそう言うと、光くんが笑った。

「ごめんごめん。僕らは、ほら、パパが本格的にやってたからさ。でも、さっちゃん、本当に強いよ?でも、すごく素直だから、予測がついて、封じ込めちゃえるんだよね。……これってもう性格だろうね。」

……なんか……誉められた気がする。

「じゃあ、置き石をして打とうか。薫に勝てるよう、僕が教えてあげる。だからさ……部活は、やめよう?」

なぜか光くんは、私が部活動をすることに反対みたい。

「光くんは?どこにも入らないの?空手は続けるんでしょ?」
改めてそう聞いてみた。

光くんは、婉然とほほえんだ。
「空手は続けるよ。高校の部活はしない。……明田先生にモデル頼まれてるんだよね。」

へ?
卒業したのに?

「あれだけ入り浸ってたのに、まだ中学の美術準備室に通う気?いいの?」

そう聞いたら、光くんは深くうなずいた。

「……正直、気まずい。だから考えたんだけどさ、すぐそばに明田先生にアトリエを借りてもらおうと思って。」

アトリエ?

「心当たりあるの?」
「ないよ。さっちゃんのパパに聞いてみる。」

光くんはそう言って、にっこりと笑いかけた。

「シェアルームにして、野木さんも誘おうか?……僕ね、意外と似合うと思うんだ。明田先生と野木さん。」

え!
本気で言ってる?

確かに、私も野木さんの恋を応援したいけど。

……。

ふむ。

それも、あり、か。