小夜啼鳥が愛を詠う

翌週、高校の合格発表を観に行き、そのまま中学に報告に寄った。
職員室で元担任の先生に伝えたあと、野木さんに引っ張られて美術準備室の明田先生を訪ねた。

……なぜか、ソファで光くんが眠っていた。
そして、明田先生はキャンパスと光くんを交互に見つめて、手を動かしていた。

どうやら、寝てる光くんをモデルに描いているらしい。

「……。」
「……。」

私達は、黙ってそーっとドアを閉めて、そろそろと入室した。

窓から差し込む陽光が、光くんの髪を明るく輝かせ、夢のように美しかった。

「……あ。」
明田先生が私達に気づいたけど、野木さんが唇に人差し指をあてて、しーっとゼスチャーした。

3人で無言でうなずきあって……。

明田先生はそのまま描き続け、野木さんもスケッチブックに愛用の鉛筆を走らせた。


しばらくして、光くんが目を覚ました。
「……あれ?来てたんだ。さっちゃん。みんな合格した?」

光くんは、合格発表に来なかったらしい。

「うん。合格。椿さんも合格したけど、来週、音楽学校の試験だから忙しそうでお休み。……光くん、月曜日の説明会と制服採寸はサボっちゃダメよ。」

そう言ったら、光くんは渋々うなずいた。

「おめでとう。まあ、小門と古城は受かって当たり前として……野木、よかったな。」

明田先生の祝辞に、なんと、野木さんは泣きだした。

……び、びっくりした。
野木さん、卒業式でも泣かなかったのに!

「明田先生!もう、生徒じゃありません!野木はこれで無事に高校生になります!半年後には16歳になります!結婚前提に、野木とつきあってください!お願いします!」
野木さんは、ポロポロと涙を流しながら、明田先生にそう訴えた。

紅茶を入れてくれていた明田先生は、唖然としていた。
「……野木。待て。早まるな。お前はかわいい。変な奴だけど、かわいいし、若い。俺みたいなキモオタのおっさんに、とち狂うな。もったいない。」

自分でキモオタと言った明田先生に、光くんがくすくすと笑う。

野木さんは、眼鏡を取って、涙をハンカチでおさえた。
……けっこう度の強い眼鏡なので、はずすと目がいつもより大きくなって……めちゃめちゃかわいかった!

「はじめて、明田さんの作品を拝見したのは6年前です。それからずっと憧れてました。同人誌の作家さんより、イケメン声優より、明田さんは私のアイドルでした。中学に入って、明田さんの生徒になって、ますます好きになりました。……一時的にとち狂ってるわけでも、感情的なわけでもありません。」

すごい……。
野木さんの告白に、私は感動すら覚えた。

明田先生は、野木さんに対して特別な感情を抱いてない。
それはもう火を見るより明らかなのに、それでも、野木さんは明田先生に想いを伝えた。