小夜啼鳥が愛を詠う

光くんはマンションまで送ってくれた。

いつも通りの優しい笑顔。
私も笑顔で乗り切った!……つもり。

でも、遠ざかる光くんの背中に、涙腺が決壊した。

……ダメだ。

ぐずぐずと泣きながら帰宅した。


「おかえりー。なっちゃん、今、お買い物に出たわよ。……え?さっちゃん?どうしたの?」
迎え出てくれたのは、ママじゃなくて玲子さんだった。

「……玲子さん……。」
私は玲子さんにしがみついて、泣いた。

あれ?
玲子さんを小さく感じる。
私の身長が伸びたのかな。

いつの間にか、私、ママよりも、玲子さんよりおっきくなってたんだ……。
図体だけ大きくなっても、中身は子供のまんまだけど。

うん。
子供の時と何も変わらない。
物心ついた時からずっと……光くんが好き。
ここから一歩も動けない。

玲子さんは黙って私の背中を撫でてくれていた。

しばらくして私の嗚咽がおさまってくると、玲子さんが言った。
「それだけ泣いたら喉が乾いたでしょ。紅茶、飲む?さっき飲み頃だったから、今は……さめて、ごくごく飲めるわよ。」

……物は言い様、ね。
ちょっと笑ってしまった。

「うん。ごくごく飲みたい。せっかく京都まで行ったのに、舞台を観ただけで、ランチもお茶もしなかったの。喉、カラカラ。」

そう言ったら、玲子さんは私の涙をハンカチで拭ってくれた。


「告白して、玉砕したの?」
紅茶を入れながら、玲子さんは淡々とそう聞いた。

私は首を横に振った。
「ううん。告白はしてない。でも今度改めてデートしたいって誘ったの。そしたら、薫くんも一緒に、って言われちゃった。」

また涙が滲んできた。

玲子さんは苦笑した。
「うーん。それは……。」

「……わかってる。ふられてない。嫌われてもない。でも、対象外よね。やっぱり私、ただの幼なじみでしかない。」

そう言ったら、玲子さんは息をついた。

「ハッキリ言うね。さっちゃん、他に目を向けたほうがいいと思う。……あの子は……母親に妄執し過ぎ。たぶん、家族の次に、さっちゃんが好きだとは思うよ。さっちゃんがそれでもいいってゆーなら、適齢期になればあっさり手に入ると思う。でも、愛されてないのに一緒にいるのって、苦しいよ?幸せじゃない。」

……重い。
玲子さんが言うと、重いわ。

そっか。
幸せじゃなかったんだ……玲子さん。