小夜啼鳥が愛を詠う

言ってる途中で気づいた。
これって、完全にデートに誘ってるよね。

キャッ!

さっき「綺麗」「かわいい」と言ってもらえて……私は浮かれてたのかもしれない。

でも、すぐに後悔した。
……光くんの笑顔がすーっと引いてしまったのだ。

あ……。
しまった。
失敗した。
ダメだ。
私、やらかしちゃったんだ。

光くん、まったく喜んでない。
それどころか、困ってる。
……迷惑だったんだ。

なんだ。
やっぱり、私……独り相撲だったんだ。
光くん、これっぽっちも私に好意なんか抱いてない。

なんだか、恥ずかしい。
私……こんなにも長い年月、光くんと過ごしてきたのに……うぬぼれも甚だしい。

結局、家族にも恋人にもなれない。
ただの幼なじみだったのに……調子に乗って……馬鹿みたい。

絶望的な気分で私はうつむいた。

言葉が出ない。
顔を上げられない。
光くんをとても見ることができない。
恥ずかし過ぎる。

どれぐらいの時間がたったのか……。

ほんの数秒なんだろうけど、私には何分にも感じられた沈黙のあと、光くんは作り笑いを浮かべて言った。

「じゃあ、受験の次の日にしようか。日曜日なら薫も学校休みだし。久しぶりにさっちゃんに逢えて喜ぶよ。」

……違う。
違うよ。
そうじゃないの。

光くんのいけず。

わかってるくせに。

私の気持ちなんか、とっくの昔にお見通しのくせに……どうして、そんなこと言うかなあ?

……やっぱり、私のことなんか……なんとも思ってないんだ……。

涙がこみ上げてきた。
でも、目をしぱしぱさせて、涙を散らす。

泣いたって、光くんの心は手に入らない。
たぶん、困らせるだけ。

たとえ、好きになってもらえなくても……傷つけたくないし、悲しませたくない。
高校生になっても、これまで通り、私は光くんのそばにいたい。
守ってあげたいんだから。

「うん。ママにお弁当作ってもらう。朝から行って、あちこち回ろう。」

笑顔を張り付けてから光くんに顔を向けてそう言った。
目尻に涙が残ってるのを感じたけど、無視した。

光くんは、一瞬置いて、それからほほえんでくれた。
「ありがとう。さっちゃん。」

……それで、もう、充分だった。

私たちは、今まで通り。
彼氏彼女にはなれないけれど、これまで通り、仲良しでいられるはず。

何も変わらない。
大丈夫。

……ううん。

大丈夫じゃない。

何も変わらないんだ……。