小夜啼鳥が愛を詠う

「了解。……たぶんね、菊乃さんの舞台がうまくいけば問題ないよ。ダメダメだったら、僕の責任問題だろうね。……まあでも、お父さんにお稽古、みてもらって、ほめてもらえてるんでしょ?大丈夫だよ。がんばって。」

不安を、憤懣をわめき散らすことで表現していたのだろう。

菊乃天人は、素直に僕の励ましを受け止めてくれたようだ。

『うん。がんばる。……だから……あの……、発表会がうまくいったら……』

電話の向こうで、菊乃天人がもじもじしてる。

「なに?ご褒美でもほしいの?」

かわいいなあ、と、僕の頬が勝手にゆるむ。

『……モノじゃなくて……。』

「ん?遊びに連れてけとか?……すぐ、期末テストでしょ?冬休みまでとっといたら?クリスマスもあるし。……まあ、僕は仏教徒だから関係ないけど。」

……ダメだ。

笑えてきた。

菊乃天人の望みなんか、言われなくたってわかってる。

本質的には、僕、だ。

はたして、彼女はそれをどう表現するつもりだろう。


もう少し大人なら、指輪や婚姻届といった形で要求するところだけど。

でも菊乃天人だからなあ……これまでだって、僕の時間と自由を拘束したがってきたし……その延長かな?

それとも、将来の約束の言葉?

誓いのキス?

……まさか、抱け、とは言わないよな。

まだ早い。

でも、今こうして電話で話してるだけなら理性で留められるけど……実際にあの子に迫られたら……なし崩し的にやっちゃうんだろうなあ。


『……え。クリスマス……逢えへんの?』

菊乃天人の声が色を失った。

「逢いたいの?」

驚いたふりをして、そう聞き返した。

『……当たり前に逢うと思ってた……。』

しょんぼりしてる菊乃天人を想像すると、もうダメだ。

かわいくてかわいくて……僕は、何でもしてあげたくなる。

君の望みを全て叶えてあげたい。

本気でそう思ってるよ。


「じゃあ、努力しましょ。……マスターのお手伝いもしたいから……丸一日は無理かもだけど。……ん?それが、発表会のご褒美?」

『違っ!……クリスマスは……別やわ。一緒にしたら、一回損やん。』

ちゃっかりそう言うと、菊乃天人はすーっと深呼吸した。

そうして彼女が口にした僕へのおねだりは……。