小夜啼鳥が愛を詠う

外に出ると、空気が爽やかで気持ち良かった。

「小春日和、やな。歩きながら話そうか。」

宗真さんはそう言って、御苑の森のほうへ向って歩き出した。

「……珍しい場所で逢ったね。何、調べてたの?」

ひと気のないことを確認してからそう尋ねた。

「ああ。こないだ、じーさんの古いノートから面白いもんが出てな……見るか?」

宗真さんは手帳に挟んでいた古い写真を見せてくれた。

そこに写っていたのは、紛れもなく扇屋の彩瀬……あやちゃんだった。

セピア色のぼんやりした色合いがあやちゃんのアンニュイな表情によく似合っていて、まるで絵画のようだ。

「……おじいさん、扇屋の彩瀬と馴染みだったんだ……。」

そうつぶやいてから、ふと気になった。


まさか……まさかね?

違うよね?

宗真さんのおじいさんが……僕の祖父ってことはないよね?


僕の言葉にならない疑問を宗真さんは理解しているようだ。

「……ああ。馴染みやったみたいやな。せやし、一瞬、俺も疑った。……光の父親の父親が俺のじーさんの可能性。……でも、たぶん違う。」

そう言ってから、宗真さんは苦笑した。

「残念やったな。……光と血縁やったら、それはそれでおもしろい縁やったのにな。」

……胸が……震えた。

宗真さんの言葉に、愛情の深さとふところの大きさを感じた。

僕が何者でも受け入れてくれている……。

「……ありがとう。」

上手く言えないけど、気持ちを伝えるとしたら感謝の言葉しか出て来ない。

宗真さんは言葉ではなく、僕の肩をぽんぽんと叩いて返事をした。


……親戚でも家族でもなかったけれど……僕にとっては大切な存在だった。


「急な代役で、嫌なヤツに捕まってしもてな……なかなか離れてくれへんで往生したわ。」

宗真さんは、連絡を絶った理由をそんな風に語った。

「それって……9月の滋賀のお寺?……地謡ですら覚えてなかったのに、よくシテを勤め上げて成功できたなあ、って感心してたんだけど……宗真さん、霊に取り憑かれてたの?」

「……まあ、そんなとこや。自覚なかってんけどな。急に、ヒトの心の声が聞こえるように錯覚して……疑心暗鬼になったんやな。周囲がみんな俺のことを嫌ったり、妬んだりしてると思い込んでしもて。家族にも鬱病かと心配されたわ。」