僕だけをまっすぐ見つめてくれる女の子を、誰に気兼ねすることもなく、僕も愛しいと思える。
ただ、それだけで幸せなんだ。
「光源氏でも、在原行平でも、『砧』の男でもない。僕は僕だよ。菊乃さんを悲しませることはしないよ。」
そう言ったら、菊乃天人の頬が赤く染まった。
ずっと連絡がなかった宗真さんが僕の前に現れたのは、菊乃天人の発表会の前日のこと。
さっちゃんが教職に必要な講義を受けてる間、資料館で関係しそうな資料を繰っていると、背後からそっと背中をたたかれた。
驚いて振り返ると、宗真さんが苦笑していた。
「宗真さん!」
「しーっ。……久しぶり。元気そうやな。」
そう言った、宗真さんは、逆にやつれているように見えた。
「宗真さんは、しんどそう。……大丈夫なの?」
何から聞けばいいのかわからない。
逢わなかった時間、宗真さんに何があったのか……単に僕と距離を置きたいだけなら仕方ないけど。
「……出て話そう?」
静寂な資料館で私語は迷惑だ。
……もしかしたら、ヒトに聞かれてはまずい話をするかもしれない。
僕は自分の借りていた資料を片づけながらそう誘った。
でも、宗真さんは手招きして、自分の読んでいたらしい資料を指さした。
「なに?」
宗真さんの座っていた席に移動して、開かれた文書に目を落とす。
それは、僕が借りてるのと同じあの街の文書群のお帳面のようだ。
あまり崩れていない綺麗な楷書で列記されている名士の名前。
地元政財界人に続いて文化人が続く。
舞踊家、役者、映画俳優、能楽師……あ……。
人間国宝だった宗真さんのおじいさんの名前もそこに並んでいた。
「これ、何のリスト?」
「歌舞練場の発表会と式典の招待客や。……さすがに、公的には残ってへんもんやな、客のリストは。」
「客って……単に各界の名士を招いただけでしょ?……宗真さんのおじいさんなら、もっとイイ街に遊びに行けたんじゃないの?」
パラパラと前後のページをめくったけれど、式次第や、式典とパーティーにかかった費用が記録されているだけのようだ。
「……まあ、他の岡場所にも馴染みは居たやろけどな……」
そう言って、宗真さんも資料を片付け始めた。
ただ、それだけで幸せなんだ。
「光源氏でも、在原行平でも、『砧』の男でもない。僕は僕だよ。菊乃さんを悲しませることはしないよ。」
そう言ったら、菊乃天人の頬が赤く染まった。
ずっと連絡がなかった宗真さんが僕の前に現れたのは、菊乃天人の発表会の前日のこと。
さっちゃんが教職に必要な講義を受けてる間、資料館で関係しそうな資料を繰っていると、背後からそっと背中をたたかれた。
驚いて振り返ると、宗真さんが苦笑していた。
「宗真さん!」
「しーっ。……久しぶり。元気そうやな。」
そう言った、宗真さんは、逆にやつれているように見えた。
「宗真さんは、しんどそう。……大丈夫なの?」
何から聞けばいいのかわからない。
逢わなかった時間、宗真さんに何があったのか……単に僕と距離を置きたいだけなら仕方ないけど。
「……出て話そう?」
静寂な資料館で私語は迷惑だ。
……もしかしたら、ヒトに聞かれてはまずい話をするかもしれない。
僕は自分の借りていた資料を片づけながらそう誘った。
でも、宗真さんは手招きして、自分の読んでいたらしい資料を指さした。
「なに?」
宗真さんの座っていた席に移動して、開かれた文書に目を落とす。
それは、僕が借りてるのと同じあの街の文書群のお帳面のようだ。
あまり崩れていない綺麗な楷書で列記されている名士の名前。
地元政財界人に続いて文化人が続く。
舞踊家、役者、映画俳優、能楽師……あ……。
人間国宝だった宗真さんのおじいさんの名前もそこに並んでいた。
「これ、何のリスト?」
「歌舞練場の発表会と式典の招待客や。……さすがに、公的には残ってへんもんやな、客のリストは。」
「客って……単に各界の名士を招いただけでしょ?……宗真さんのおじいさんなら、もっとイイ街に遊びに行けたんじゃないの?」
パラパラと前後のページをめくったけれど、式次第や、式典とパーティーにかかった費用が記録されているだけのようだ。
「……まあ、他の岡場所にも馴染みは居たやろけどな……」
そう言って、宗真さんも資料を片付け始めた。



