小夜啼鳥が愛を詠う

「……ふーん。」

興味なさそうな口振り。

でも菊乃天人は、目に見えて上機嫌になった。

……なんてゆーか……おもしろいぐらい、わかりやすくて……かわいい……。

「菊乃さんがそれだけ喜ぶなら、このままフェードアウトでいいのかな。」


僕自身、菊乃天人といると楽しいからか……宗真さんに頼ったり甘えたりしてなくても、精神のバランスを崩していない。

雛鳥が巣立つように、宗真さんから離れる時が来ているのかもしれない。


菊乃天人は、にへらっと口元を緩ませた。

そんな顔を見ていると、僕の中にはじめての感情が込み上げてきた。

……この子のこんな幸せそうな笑顔を見ていたい……僕が守ってあげたい……僕が笑顔にしてあげたい……僕だけが菊乃天人を笑顔にしてあげたい。

独占欲?

同時に、貞操観念にも似た、束縛される心地よさ。

……ふむ。


「菊乃さんとゆきぼんは……例えば、親御さんに結婚を望まれたりしてるの?」

突然そんなことを聞いた僕に、せっかくの菊乃天人の笑顔が引きつった。

「……望んでない。私は!とーさまも!……にーさまやおばあちゃまは、それもいいかも、って思ってると思う。かーさまは……光がお気に入りみたい。」

「……なるほど。僕が現れるまでは、概ね受け入れられてたんだね。ゆきぼん。……そっか。」

そう納得する僕に、菊乃天人は顔を真っ赤にして怒っていた。

でもね。

普通に考えても……似つかわしいんだよね。

ゆきぼんと菊乃さん。


「ごめんね。予定調和を乱して。……でも、君が好きだよ。君のやりたいことを応援してあげたい。大工さんになりたいなら、それもいいと思う。」

僕は菊乃天人の両手をとって、しみじみとそう言った。

「……この白い手が傷つかないか、心配だけどね。」

さっきまで怒りで赤かった顔が、今度は、デレデレになっていた。

かわいいなあ……。

抱きしめたい欲求を両手にこめて、だいじにだいじに撫でるように唇を這わせた。

「……光。あの……ちょっと……エロい……。……欲求不満ちゃう?」

照れ隠しのつもりだろうか。

菊乃天人はそう言い放って、自分の言葉にまた赤くなった。