小夜啼鳥が愛を詠う

帰宅後、残してくれてた夕食をいただき、後片付けしていると、おじいちゃんがそばに来た。

「……誰にも言ってないけど……その……なんだ、ちょっと、年の差が気になったんだが……大丈夫?」

心配そうなおじいちゃんに、僕は笑顔でうなずいて見せた。

「ありがとう。気を使わせてごめんなさい。……まだよくわからないんだけど、あの子と僕、またいとこみたいなんだ。少し調べてから、あーちゃんとお父さんに相談するから……話題にするの、もうちょっとだけ待っててくれる?」

いつも冷静なおじいちゃんが目を大きく見開いた。

「……またいとこ……ということは……祖父母同士が兄弟ってことか。それは、あおいちゃんのご両親じゃなくて……?」

神妙にうなずいて見せると、おじいちゃんは息をついた。

「そうか……。わかった。でも、あちらさんのご家庭に波風を立てないようにだけ、気をつけなさい。見るからに、いいお家のお嬢さんだろ。」

「うん。ありがとう。……日本舞踊のお家元の娘さんだよ。」

おじいちゃんは話のわかるヒトだけど……さすがに、驚いていた。


まあ、そりゃそうだよな。

マスターにも、色々聞かれるだろう。

気恥ずかしいけど、めんどくさいとは思ってない自分が、何だかおかしかった。



お風呂の後、宗真さんにメールを送信しておいた。

初役おめでとうございます、と。

珍しい演目だと言ってたし詳しい話も聞きたいけれど、今日はお疲れだよな。

明日か明後日、あらためて連絡してみよう。


ホルダーに戻そうとしたちょうどその時、僕のスマホは着信を知らせる光と振動で自己主張をしてきた。

表示されている名前は、菊乃天人。


「……もしもし?」

『菊乃です。あの……今日は、ごめんなさい。』

別れ際とは別人のしおらしさだった。

「……謝罪?何で?……神戸、イマイチ楽しめなかった?」

もちろん、菊乃天人が何を気にしてるのかはわかってるけど、僕は敢えてそう聞いてみた。

『ちがっ!神戸、すごくうれしかった。また、連れてってほしい。……お店も……別荘も……。』

受話器越しにも恥じらいが伝わってきた。

乙女らしいかわいらしさに、僕の胸も高鳴った。