小夜啼鳥が愛を詠う

「……まあ……恋愛対象じゃないね。確かに。お世話にはなってるよ。」

何を知ってるんだろう。

……何を言わされるんだろう。

今、知る必要はないのに……。

菊乃天人が成長する頃までに清算すればいい……。

そんな風に思っていた僕は、菊乃天人の剣幕に困惑していた。

「ふぅん。セフレ?」

挑発に乗せられそうになったけれど、僕は何も感じないふりをした。

「……いや。むしろ、精神的に助けてもらったよ。……ずいぶん、宗真さんにこだわるね。嫌いなの?」

「嫌い!」

突如、菊乃天人はそう叫んだ。

びっくりした。

「知り合いなの?なんか……あった?」

「知らない。でも、あの日、わかったもん。舞台の吉野天人は光だけを見てて、光も完全に心を奪われてた。……それに……宇治で、2人を見たことある……。」

「え……。」

さすがに驚いた。

宇治……。

確かに、宗真さんの宇治のお稽古場にはよく遊びに行った。

時間が合えば、2人で外を歩くこととある。

……でも僕らは確かに肉体関係はあるけど……別に唯一無二の恋人同士でも、ゲイカップルでもないから、外でいちゃつくことはない。

ただ歩くだけで、怪しさは滲み出るものなのか?

「宇治には宗真さんのお稽古場があるから、何度もお邪魔してるけど。……わからないな。菊乃さんは、どうして宗真さんを毛嫌いするの?イイヒトだよ?」

「光がほめるから。」

ふんっ!と、そっぽ向いて、菊乃天人はそう言った。

……えー……。

それだけじゃなさそうだけどなあ。

うーん……。

「もしかしてさ、菊乃さんのお兄さんに関係してる?」

菊乃天人の肩が揺れた。

反応してる……。

当たりかな。

うーん。

宗真さんも、なんか、変な感じだったよな。

……触れてはいけない感じ?

「何か言ってた?」

菊乃天人がそう聞いてきた。

「何かって?」

そう聞き返すと、菊乃さんはむーっとしたまま言った。

「うちのにーさまのこと……親切づらして、無責任に優しくして……弄んだとは言わないけど……にーさま、傷ついたから……。」

……いや……それは……ちょっと……言い過ぎなんじゃない?

「ホントに親切心だったんじゃないの?」

そう言ったら、菊乃さんはキッと僕を睨んだ。

「ほら!また肩を持つ!もう!」

……うわぁ。

前言撤回。

ジェラシー、めんどくさいわ。

僕はそれ以上、何も言う気になれなくなってしまった。