小夜啼鳥が愛を詠う

……遠慮がないというか……歯に衣着せないというか……。

僕は苦笑して、菊乃天人のひたいにそっと口づけた。

菊乃天人の頬が赤く染まった。

……口では言い負かされるけど……とりあえず当分は、僕がイニシアティヴを取れそうだ。


「うん。阿呆だよ。僕は。……重度のマザコンで、元、無気力な引きこもりで。」

そう言ってから、菊乃天人を抱き寄せて背中を撫でようとした……けど、帯が邪魔で上手くいかない。

しかたなく、肩周辺に手を這わせた。

「たぶんね、菊乃さんにつきまとう幽霊は、僕の父の母で間違いないと思う。名前は、あや。扇屋という置屋さんの遊女で彩瀬という源氏名だったそうだよ。」

帯を解いてしまいたい誘惑、身八ツ口から手を入れたい誘惑と戦いながら、着物の上をおとなしく辿りながら続けた。

「菊乃さんのおばさんか、大おばさまか、おばあさまか……近親者に、はなさんっていらっしゃる?あやさんの双子のかたわれのはずなんだけど。」

一瞬、菊乃天人の目が泳いだ。

でも僕がその目をじっと覗き込むと……菊乃天人はため息をついて、うなずいた。

「……小学校に入ってすぐぐらいに死んじゃった……私の父方の祖母のことだと思う。梅宮はな。……透明感のある、浮き世離れしたヒトだった。」

おばあちゃん……か。

「つまり、僕らは、実の父親の母親同士が双子の姉妹だから……またいとこ、ってわけだ。六等親。……親戚だね。」


やっぱり、宗真さんの言う通りだったんだ。

本当に、菊乃天人と僕とには、同じ血が流れているのか。

……胸が……疼き始めた……。

やっぱり僕は、血縁に弱いらしい。

愛しさがどんどん膨れ上がる。


「六等親……。結婚できる!よかったぁ……。」

菊乃天人は心から安堵していた。


結婚?

さすがに気が早いというか……単純過ぎるだろう。

でも、喜んでる菊乃天人を見てると、それもいいかな、って思ってしまう自分に気づいた。


菊乃天人は、冷めたコーヒーを
「マスターのいれたコーヒーより、美味しい。」
と、言い張って飲み干した。

入れ直したいけど、豆も水も足りない。

心にリベンジを誓った。