小夜啼鳥が愛を詠う

菊乃天人によく似た面差しだけど、彼の方が柔和かな。

一目で、菊乃天人の兄とわかった。

……てかさ……ごめん、もっとディープなことまでわかっちゃったよ。

彼、姿は男だけど、中身は……女の子だな。

ゲイっぽいぞ。

……うーん……。

オネエの舞踊家は、普通にありだと思う。

そもそも、芳澤あやめって、普段から女装してたバリバリの女形だし……耽美で有名な舞踊家さんも男色家多いし。

問題は跡継ぎだけど……もしかして、菊乃天人は保険だったりするのかな。

……どこも、大変だな。

宗真さんのところも、未だに男の子生まれないし。


そうだ。

連絡してみよっと。



翌日は台風一過のきれいな青空が広がっていた。

夕方まで純喫茶マチネで過ごしてから、僕は大阪へ出た。

日曜日に滋賀で地謡と後見を頼まれている宗真さんは、謡の豆本を携えて待ち合わせ場所にやってきた。

「珍しいね。覚えてないの?」

「……ああ。めっちゃマイナーな演目ねん。内弟子時代に暗記したっきり、初めて謡うねん。……他の地謡連中も、シテもワキも、必死で暗記してる思うわ。……で?話したいことあるんやろ?どした?」

そんなに大変な時でも、無理やりでも時間を作って僕の話を聞き、慰め、励まし、力をくれる宗真さん。

改めて、感謝と敬愛でいっぱいだ。

「うん。ありがとう。……とりあえず、抱っこ。」

何の計算も、駆け引きもない。

ただ、無邪気な子供になって甘えられる存在。

……僕にとって、宗真さんは、性戯有りの保護者のようなものかもしれない。



「芳澤流とおつきあいある?」

お互いの昂ぶりを鎮め合った後、まどろむ宗真さんにそう聞いてみた。

「よしざわ……ああ、梅宮んとこやな。つきあいは、ない。幼稚園から高校まで同じ学校やったけど、友達付き合いもしてへん。共通のツレはいるけど。」

え……。

「梅宮?……芳澤流のお家元だよ?表札も『芳澤』だったけど。」

宗真さんは、ちょっとつまらなさそうに答えてくれた。