小夜啼鳥が愛を詠う

「急にお邪魔して、申し訳ありません。小門と申します。」

「……京都の子ぉと違うみたいやけど、お茶、習ったことありますん?」

どうやら事情聴取が再開されるようだ。

「はい。神戸です。お茶は正式には習ったことがありませんので、お点前はできません。飲み方だけは、祖母に教わりました。……変なとこ、なかったですか?」

最後は菊乃天人のお母さんに聞いてみた。

彼女はほほ笑んで褒めてくれた。

「姿勢も所作も綺麗やったわ。……そう。神戸から。……大学は京都なの?こっちに下宿してはるのん?」

「いえ。神戸から通ってます。」

そう返事したら、菊乃天人が不服そうに言った。

「京都に住んだらいいのに。」

菊乃天人のぼやきを笑顔でスルーして、僕はお母さんとひいおばあさんに言った。

「祖父の友人の純喫茶を手伝ってるので神戸から離れられないんです。戦前の建物で、なかなか雰囲気があるイイ店です。……菊乃さん、観に来たいんだよね?」

ハッとしたように、菊乃天人が伸び上がって手を挙げた。

「はい!行きたい!行く!築100年超えのカフェやって!別荘も近代建築でしょ?見たい!」

「うん。カフェじゃなくて、純喫茶だけどね。……そっか。菊乃さん、近代建築に興味があるんだ……。」

なるほど、それであの街を徘徊してたのか。

単にお友達の舞ちゃんを訪ねるだけじゃなさそうだとは思ったけど、建物を見るのが好きなんだな。

「え……これから行く気じゃないわよね?」

「台風やし、今日は無理やわ。後日改めて。光に連れてってもらっていい?」

菊乃天人は両手を合せておねだりポーズを見せた。

さすがにお母さんは返答に詰まった。

「……主人に聞いてからじゃないと……。」

……まあ、そうだよな。

僕が親でも、OKは出せないだろうよ。


でも、このひいおばあさんは、男前な気質らしい。

「男親が娘のボーイフレンドにいい顔するわけないでしょう。むしろ内諸にしとき。……もちろん、暗くなる前に送り届けてくださるんですよね?小門くん。」

笑顔で僕を威圧してきた!

僕は、負けじと笑顔でうなずいた。

「もちろんです。門限は6時ですか?」