小夜啼鳥が愛を詠う

菊乃天人の回答は、さらに僕を惑わせた……。


「光の自宅、光の別荘、光の手伝ってる、レトロな純喫茶?」

「……。」


これは……せまられてるんだろうか。

いや、でも、あまりにも直球というか……。

他の女の子に同じことを言われたら、それだけで興醒めして、すみやかに離脱したくなるようなあからさますぎるアプローチ……なんだけど……。


菊乃天人の瞳は期待でキラキラしていたけど……恋愛感情とか、誘惑とか……そーゆーのは感じないんだよな……残念ながら。

とりあえず、少しおどけて確認してみた。

「僕に興味があるんだ?」

すると、菊乃天人は、ちょっと呆れたような顔をして、それから……失笑した!

……違ったらしい……。

気恥ずかしくなってきた……。

ばつが悪い僕を、まるで気遣うかのように、菊乃天人は同調してくれた。

「うん。興味津々。」

……無理がありすぎるだろ。

いや、確かに、僕に好奇心はあるのかもしれない。

僕の容姿を気に入り、背景と人となりを探っているところなのかもしれない。

……でも、僕が彼女に求めているのは……そうじゃなくて……普通に、女の子らしいかわいい恋心を抱いてほしいなあ……って……。


あれ?

なんか、勝手な言いぐさだな。

そうなったらそうなったで、僕のほうが彼女に興味を失うかもしれないのに。


……いや。

そうでもないか。

さっちゃんだって、あんなに一途に僕を想ってくれてたのに……ずっと相思相愛だったのに、弟の彼女になった今なお、いつまでも愛しい……。


この目の前の不思議な子もまた、僕にとって特別な子になりうる可能性はある。

……既に……特別なのかもしれない。

菊乃天人は、僕の苦手とする反社会的組織のお嬢さんなのだろう。

本当なら、その時点で、関わりたくない子のはずだ。

なのに、こうして……我ながら下手くそな慣れない駆け引きまでして……。

まるでピエロだ。

たぶん、惹かれてる。

台風なのに、帰したくない。


でも、さすがに、神戸に連れてくわけにはいかないよなあ。