小夜啼鳥が愛を詠う

……やばっ。

任侠のお兄さんだ!


雨が車内に降り注ぐけど、閉めるわけにもいかない……。


「車、移動して。」

ドスの利いた声だけど、怒鳴られはしなかった……。

「え?……あ、はい。すみません、邪魔でしたか……。」

わずかしか開けてないのに、僕の顔も髪も肩もずぶ濡れになってきた。

「ここ、駐停車禁止や。……それに、この車、目立つから……念のために動かしたほうがいい。」

……へ?


「あ!いた!光!……なに?この車……。色、はげはげ。」

赤い傘をさして、天人の彼女が走ってきた。

今日は制服じゃない。

やっぱり学校はお休みだったのだろう。

この大雨なのに、あまり濡れてないところを見ると、この近くの子で間違いないようだ。

「おっちゃん、どうしたん?このヒト、私の友達。今日、会うって約束して、来てもろてるんやけど。」

天人の彼女は、眼光鋭い、いかつい男性に、物怖じすることなくそう言った。

すると、彼の態度がコロッと変わった。

「……お嬢のツレか。ほな、大丈夫やろ。とりあえず、この位置からは車、動かして。」

お嬢……。

「光、開けて。」

トントンと助手席を叩かれて、僕は慌てて男性に会釈してから、伸び上がって彼女に言った。

「開いてる。てか、オートロックじゃないから。どうぞ。」

シャワーのように、雨が降り注いだ。


外から車に乗り込んできた彼女はほとんど濡れてないのに、車で来た僕がずぶ濡れになってしまった……。

本当は、彼女のために持ってきたタオルで髪と顔を拭きながら、エンジンをかけた。


「ふる~!パイクカーじゃなくて、中身も古いんや。」

天人の彼女は、車内をキョロキョロ見回してそう言った。

「うん。そうだね。でも、状態は悪くないよ。よく走ってくれる。」


……ところで、どこに行けばいいんだろう。

振り返ると、既にさっきのヒトはいない。

「あのヒト、知り合い?」

そう尋ねると、彼女は首を傾げた。

「知り合い?……せいぜい、顔見知り?向こうは私のこと、調べて、よく知ってはるみたいやけど、私は名前も知らんわ。刑事さんとしかわからへんわ。」

刑事?