小夜啼鳥が愛を詠う

金曜日、僕は柄にもなく緊張していた。

朝からあいにくの雨。

秋の長雨……ならいいんだけど、折悪く、台風が接近しているらしい。


げ。

京都は大雨洪水警報出てるよ。

天人の彼女の学校、お休みじゃないか?


ツイッター検索してみると、案の定、休校のようだ。

……てか、電車も、何本も運転取りやめになったり、速度を落として徐行してるらしい。


うーん。

とりあえず、ダメ元で行ってみるか。


電車はかなり遅れて、車内がこみあってるようなので、車で京都に向かった。


マスターに影響されて、僕は愛車に旧車を選んで乗っていた。

アルピーヌという、今はルノーに吸収合併された会社の車だ。

きれいな青空色のスポーツカーで有名だが、僕のアルピーヌは、古すぎてだいぶ色褪せていた。

なんせ、1963年式だからね。

半世紀前の車でも、まめに手を入れれば快適に走ってくれる。

マスターのシボレーカマロが1969年式だから、それよりさらに古い。

でもマスターの車よりは小さい。

一応4シートのクーペなので、他のアルピーヌと比較すると、地味だ。

エアバッグどころかシートベルトもないし、真夏にエアコンをつけるとすぐにバッテリーが上がる。

カーステはあっても、CDも聞けない、ナビもつけられない。

そんな不便な愛車を僕は、こよなく愛していた。


さすがに雨漏りはしないけど、台風の高速は怖い。

精神的に疲労困憊してやっと到着した京都市は、盆地のせいか、道中や神戸より穏やかだった。


……さて。

こんな雨の中、天人の彼女は本当に来てくれるのだろうか。

なるべく邪魔にならなそうな路肩に停車して、彼女を待つ。

あーちゃんやさっちゃんを待つ時とは違う……わくわくだけじゃなく、不安まじりの複雑な心を持て余す。


雨が強くなってきた……。

フロントグラスに叩きつけるような大粒の雨。

視界が悪くなってきた。

……こんな雨じゃ、かわいそうだな。

むしろ、彼女が来ないほうがいい気がしてきた。



不意にガンガンとすぐ横のガラスを叩かれた。

……え……?

びっくりして、ドアを少し開けた。

ビニール傘をさした、目つきの鋭い男性が僕を見下ろしていた。