小夜啼鳥が愛を詠う

「……桜子の父親としても、生まれる前から君を知ってる友人としても、光くんが他の女の子とちゃんと向き合って、遊びじゃない、恋愛関係をはぐくむ気があるのなら、応援したい。」

マスターはニッコリ笑ってそう言った。


……僕はマスターにとって親友の孫……それも血のつながりのない孫なのに……マスターは、僕を友人と言ってくれた。

素直にうれしかった。


「たとえまだ子供でも、怖いヒトのお嬢さんでも?」

僕もまた、照れ隠しに苦笑して見せて、そう聞き返した。

マスターは少し眉をひそめたけれど、ちょっと考えるように首を傾げた。

「歳はともかく、その子の背景はまだわかんないんだろ?……とりあえず、金曜日?それとなく確認しておいで。」

僕もまた首を傾げて、それから、うなずいた。

「あ。ちなみに歳は薫と同じぐらいだと思うよ。中学生。同じようなセーラー服でも、小学生と中学生ではスカートの形とスカーフの結び方が違うみたい。ネットで調べた。」

そう答えたら、マスターはにやりと笑った。

「……光くんが……わざわざ、調べたんだ……。そりゃ、ずいぶんご執心だね。へえ~……。どんな子やろ?今度、連れておいでよ。」

「さすがに、中学生を京都から神戸へ引っ張ってこれないよ……。」

未成年略取……いや、それも、僕も未成年なら、罰則対象じゃないのかな???

それより、この場合、京都の条例が適用されるのか、兵庫の条例が適用されるのか……どうなるんだろう。


「おーおー。高校受験前のさっちゃんを連れて、神戸から京都に行ったくせに。」

マスターに揶揄されて、僕はムキになった。

「さっちゃんとは、それこそ、生まれる前から一緒にいたもん。……あの子は、まだ2度、偶然会っただけだよ。」

「3度めも約束したんだろ?まあ、楽しんでおいで。」



しばらくマスターはニヤニヤしていたけれど、開店直前に、ふと気づいたように言った。


「なあ、光くん。うちの常連さんにも組関係のヒト何人もいるんだけど……気づいてた?」

「え……いや、気づきませんでした。……そーゆー意味で柄の悪そうなヒト、あまりいらっしゃいませんよね、ココ。」

いつも賑わってるし、近所の商店街のおっちゃんやおばちゃんは、多少うるさいぐらい盛り上がってくこともあるけど……