小夜啼鳥が愛を詠う

「いややわぁ。冗談やのに。……光のほうが綺麗。うちのとーさまに似てはるわ。」

天人の彼女は、そう言って彼女は、目をキラキラさせて僕に手を伸ばそうとして、途中で引っ込めた。

そして、照れくさそうに笑った。

……どこまで本気で、どこからが冗談なんだろう。

目の前の少女は、なんてゆーか、独特だ。

変わってる……という一言では表現しきれない。


てか、とーさま?……父親をそう呼んでるのか?


「さて……と。こんなディープなところに何しに来はったん?わざわざ神戸から来はるとこちゃう思うけど。もしかして、まだ営業してる思て、来はった?」

彼女は、すっくと立ち上がった。

君こそ、こんなところを制服で1人で……何してるんだよ。

僕もまた立ち上がり、扇子を閉じて彼女に差し出した。

「この4月から京都の大学に通ってるから。……この街の現況を見てみたくてね。立派な建物が既にいくつも取り壊されたって聞いたから。資料でも残ってたらいいんだけど。」

真面目な学生をアピールしてそんな風に答えた。

すると彼女は、首を傾げた。

「資料ねえ。……あっても、一見さんに見せてくれへんやろなあ。」

なんだか詳しそうな天人の彼女に違和感を覚えた。

「……だよね。建物の中も見たいけど……空き家か、リフォームして転業してるよね、どこも。」

ため息まじりにそうつぶやいた。

すると彼女が細い通りを指差した。

「あっちに、昔の貸座敷……てゆーか、ヤリ部屋を、ほぼそのまま使ってるカフェあるわ。提灯も昔のんをそのままぶら下げてはる。今度、行ってみはったら?……それに、外科の医療器具の資料館って看板かけてる近代建築もあるわ。入ったことないし、今も見せてくれはるかは知らんけど。でも、そこなら資料あるんちゃいます?」

外科!

資料館!

……扇屋の彩瀬の直接の死因は、破傷風だ。


目の前がパッと開けた気がした。


天人の彼女のあまり美しくない表現の言葉が気になったけれど、敢えてスルーした。

僕は笑顔で彼女の両手を握った。

「ありがとう。これから行ってみるよ。今日ココで君に会えて、うれしかった。」

彼女の言う通り、偶然じゃなくてご縁なのだろうか。