小夜啼鳥が愛を詠う

少し歩くと、彼女の顔に血の気が戻ってきた。

「ありがとう。おろしてください。たぶん、もう大丈夫。……お世話かけました。」


至近距離で綺麗な瞳で見つめられ、僕の鼓動がまた音を立てた。



多少、名残惜しさを感じつつ、日陰を選んで、そっとおろす。

ふわりと、天人が地上に舞い降りた。


「……細いのに、筋肉質ですねえ。細マッチョってやつ?」

彼女はそう言いながら、カバンから扇子を出した。

「貸して。落ち着くまで、ゆっくりしてたほうがいい。……小さい頃から空手してたから。」

僕は、有無をいわさず扇子を取り上げ、彼女に風を送った。

「……ありがとう。でも、貧血でも、熱中症でもないねん。……お兄さんのしんどいのをもろてしもたみたい。これもご縁やわ。しょうがない。」

彼女は飄々とそう言った。


……いろいろ、腑に落ちないけど……僕は、何よりも、天人の彼女に「お兄さん」と呼ばれることを快く思えなかった。

「光。」

なぜか、僕は自分の名前を彼女に告げることを優先させた。

それから、慌てて、言葉を継いだ。

「じゃあ、僕の感じた痛みと動悸は、君にうつったって言うの?……確かに、僕はあの後、痛くなくなったけど……」


天人の彼女は、ふふっと笑った。

「痛みだけ。あの場に残存する怨恨の念に当てられただけ。せやし、移動したら消えるんやと思う。……動悸は違うわ。ドキドキしてはるんは、光自身。私みたいにかわいい子ぉに再会できてうれしいってゆーてはるんやと思うけど?違う?」

……ぐうの音も出ない。

たぶん図星だ。

てか、まさか呼び捨てにされるとは思わなかったな。


なんてゆーか……天真爛漫……天衣無縫……。

呆れる……というよりは……ある意味、感心した。


いや、でも。

確かに天人の彼女は、かわいい……というより、ゾクッとする色気があると思う。

でも、単純に造作の美醜だけで比較したら、この子よりさっちゃんのほうが綺麗だし、もっと言えば、あーちゃんや僕の方が美人だ。