小夜啼鳥が愛を詠う

かわいいけど……呆れた。

……こんな風に、自分から……やっちゃうんだもんなあ。

ほんとに、わけのわからない子だよ。



「……野木は……明田さんが好きだから、小門兄は、役得だと思えばいい。」

野木さんはそう言ってから、顔を歪めて続けた。

「小門兄のセフレの1人になりたいわけじゃない。……これは、野木や小門兄を捨てて行く明田さんへの……復讐だから……。」


僕は思わず息をついて、天を仰いだ。

……馬鹿馬鹿しいけど、野木さんの気持ちは理解できる気がした。

まあ、役得とは思わないけど。

むしろ……やばいなあ、って黄色い信号が点滅してる。


野木さん個人はいい。

充分、欲情するさ。

場合によっては、継続も有りだろう。


でも、野木さんは……さっちゃんの親友。

さすがに、隠し通すのは難しい。


だから、これ一回だけにすべきだ。



僕は観念して、野木さんに言った。

「僕は、野木さんのこと、好きだよ。」


嘘じゃない。


野木さんは、悲しそうにうなずいた。

「うん。ありがと。野木も。小門兄が好き。……ごめん、」

謝罪の言葉を最後まで聞くつもりはなかった。


負い目なしに、ただお互いを憎からず想う心だけで、抱き合いたかった。

……明田さんという、共通の、つれない想い人を抱えて……。




復讐、だと野木さんは言った。


対象は明田さんだけじゃなかったようだ。

結果的に明田さんを日本から遠ざけた原因としての僕。

同時に、言わずもがなな好意を振りかざすことで罪悪感なしに野木さんを抱いた僕。

そして、たぶん、野木さんの親友のさっちゃんから逃げ続けた僕。



野木さんの復讐は、効果覿面だった。

さっちゃんに、僕と野木さんとの行為を伝える……ただそれだけで、僕のダメージは計り知れない。

僕は、そののち一生、野木さんに対して素直になれなくなってしまった……。

たぶん、それこそが、野木さんの復讐の完成形だったのだろう。