小夜啼鳥が愛を詠う

「うん。悲しい。野木さんと同じように、悲しい……。さっきなんか、僕の顔を見てくれなくって……。」

そう言ったら、野木さんは顔を上げて僕を見た。

……かわいいな。

いや、もともと野木さんはかわいい子だ。

多少、趣味とか言葉遣いは変だけど、邪気のない、まっすぐな性質も、昔から知っている。


野木さんの白い指が伸びてくる。

僕の頬を伝う涙を拭いてくれてるつもりらしい。

同じように、僕も野木さんの頬に触れた。


「……かわいそう……明田さんも、小門兄も……野木も……。」

心が震えた。

「うん。かわいそう。……僕、明田さんのこと、好きなのに……どうして、こうなっちゃうんだろうね……。」

また、涙がこみ上げてきた。

「……一番じゃないから。明田さんは、今も、小門兄のお父君が忘れられない。だから、小門兄を代わりにしたくない。……野木のことも……逃げ場に利用したくない。……全然かまわないのにね……。」


野木さんの言葉は、何度も何度も、明田さん自身から説明されてきた。

だから、わかってる。

でも、僕らは……ソレはソレとして……僕らとも仲良くして欲しかっただけなのに……


「簡単なことなのに。好きって気持ちはあるんだから……ねえ?」

同意を求めると、野木さんは大まじめにぶんぶんと首を縦に振ってうなずいた。

なんだかおもちゃみたいに可愛くて……、僕は野木さんのひたいにそっとキスした。

野木さんは、一瞬目を見開いて……それから、目を閉じた。

涙がまた頬を伝った。


「小門兄……。抱いて……。」

野木さんが、か細い声でそう言った。

「……明田さんの代わりに?」

多少意地悪だったかもしれない。


僕は、野木さんが小学生の頃から、僕に好意的なことをもちろん知っていた。

それでも、他の女子のように色目を使わない野木さんが、僕には好ましかった。

だから、僕は……ちょっとだけ、へそを曲げた。


僕の苛立ちが通じたのか通じてないのか、野木さんは僕の肩に両手を置いて、伸び上がって強引にキスしてきた。

ふるふると震えていた……。

「もしかして、ファーストキス?」

さっと、野木さんの頬が赤くなった。