小夜啼鳥が愛を詠う

「失礼します。」

さっちゃんママに断って、奥の部屋へ。

紙袋の中には、光沢のある黒い生地のジレと、黒い蝶ネクタイ。

……なるほど。

ギャルソンの衣装だな。


うーん……我ながら似合いすぎ。

多少チャラく見えるのは、ギャルソンのイメージかな?

ついでに、マスターのワックスを借りて、髪をかきあげて、全体的に後ろに流した。



「すごい!光くん!かっこいい!」

さっちゃんママは、手を叩いて誉めてくれた。

マスターも満足げだった。



夕方、さっちゃんと薫がやってきた。

……一目で、気づいた。

さっちゃんの薫を見る瞳が……違う……。

恋、だ。


そうか。

とうとう、この日が来たのか……。

ついに……。


長年、待ち望んでいた。

そのために、あきらめたんだ。

これでいい。

後悔なんかしない。


……でも……やっぱり淋しくて……。


ぽっかり空いた心を隠すように、僕はいつもより明るく笑った。




18時過ぎに、あーちゃんとお父さんが来た。

「……何やっとーねん。」

おじいちゃんから聞いて、慌てて飛んで来たようだ。

お父さんは呆れてるかな?

でも、あーちゃんは手をたたいて大笑いして、ウケた。

……僕のギャルソン姿がやたら気に入ったらしい。

僕の中の彩瀬パパが、すっごく喜んではしゃいでいる……。


「ごめんね。頼之くん。事後承諾だね。……光くん、お手伝いしてくれるんだって。」

マスターがお父さんにそう言った。

「お手伝い……。大丈夫なん?却って、マスターに迷惑かけよらん?」

お父さんの目が、銀フレームの眼鏡の奥で、細くなった。

「……迷惑どころか、光くん、いいよ。上品だし丁寧だし。」

マスターにそうほめられて、僕はちょっと胸を張った。

「ふぅん?……遊びじゃないんやったら……。まあ、しっかりな。」

お父さんの許可を得られたようだ。



その夜、薫の提案で、急遽、さっちゃん家でクリスマスパーティーをすることになった。

どさくさ紛れに、薫は、35年以上別居していたおじいちゃんとおばあちゃんを復縁させた……。


おじいちゃんは、この夜から、我が家に住まうことになった。

……せっかくイイ感じの距離感だったんだけど……突然、普通の家族のようになんて……できるわけない……。

僕は、今までよりも、おじいちゃんに対して、微妙な遠慮と過剰な気遣いをするようになってしまった。

つまり、人見知りモード……だ。


人間関係は、難しいよ。