小夜啼鳥が愛を詠う

袖触れ合うも何かの縁、という。

あの日、言葉を交わしたのは、意味があったのだろうか。


ご縁?

天人……。


あ。

そうだ。

宗真さんに聞けば、何かわかるかな?


天人の子のお兄さんが「吉野天人」を舞うって言ってたんだもんな。

もしかしたら、宗真さんも知ってるかもしれない。


……いや。

それ以前に、ロビーで関係者っぽい誰かと話してた……。

宗真さんの奥さんならご存じかも。



……。



……なんで、僕は、天人の子を探そうとしてるんだろう。

何の用もないのに……理由もないよな。


いや。

自分で理由のわからないってことは、やっぱり彩瀬パパの意志が働いてるのかもしれない。


……わかんないよ。




結局、悶々としたまま課せられた3日間が過ぎ、僕は補習から解放された。


クリスマスイブの朝、意気揚々とさっちゃんのパパのお店を訪ねた。

「いらっしゃいませ。……やあ、光くん、おはようございます。ずいぶんと早いですね。どうされましたか?」

……さっちゃんのパパ……つまり、純喫茶マチネのマスターは、僕ら未成年相手でも、店では必ず美しい敬語で話してくれる。

そんな礼儀正しさも含めて、僕はこの店が好きだ。


「おはようございます。マスター。突然ですが、今日1日、こちらでお手伝いさせていただけませんか?」

マスターを見習って、折り目正しくそうお願いしてみた。

「……へ?」

突然の申し出に、マスターはポカーンとしていた。


「あ。……バイト?」

気を取り直してマスターがそう確認した。

「いえ。お金はいただくつもりありません。お手伝いしたいんです。」

そう言ったらマスターは首を傾げた。

「なんで?社会勉強?……でも、光くん、人見知り……。」

「はい。……だから、全くお役に立てないかもしれません。すぐに逃げ出しちゃったら、ごめんなさい。」

ぺこりと頭を下げてそう言ったら、マスターはちょっと笑った。

「……先に謝るんや。うーん、でも、うちとしては、光くんの事情よりお客様の居心地優先なんだけど。」

マスターの言葉に、僕は慌ててうなずいた。

「はい。もちろんそうですよね。肝に銘じます。」

そう返事したら、マスターはしげしげと僕を見て、肩をすくめた。

「……まあ……そこさえ遵守してくれるなら、別にかまわないけど。……さっちゃんのボランティアに影響された?」

影響……されてるのかな。