小夜啼鳥が愛を詠う

「スポーツでもすれば?サッカー部、誘われてるんやろ?」

「……いや、運動は充分足りてます。僕、空手の道場には通ってるし。……サッカーねえ……団体競技じゃなければ、やってもいいんだけどねえ……。」

「ほな、空手、真面目にやったらいいのに。何の目標もないまま、漫然と生きてるから、贅沢な悩みで悶々としてられるんやろ。」

宗真さんは、そんな風に僕を揶揄した。


健全な精神は健全な肉体に宿る……ってさ。




実際、宗真さんと話すことで、僕は以前より前向きに彩瀬パパの存在を受け入れられるようになった気がする。

取って食われるわけでもないし、たまに僕の身体を貸すぐらいのことはいいんじゃないかな。

……まあ、あーちゃんに色目を使うのだけは、ちょっと申し訳ないけど。






高1の2学期の期末テストの前日、宗真さんの大阪のお稽古の空き時間を2人で過ごした。

秋の繁忙期を乗り切った宗真さんは、穏やかな顔をしていた。


「決めた。大学は京都に行く。」

唐突にそう言ったら、宗真さんの頬が緩んだ。

「あ、でも、神戸から通うけどね。京都に住むわけじゃないよ。……とりあえず、目標を作ってみた。」

笑顔でそう言ったら、宗真さんは首を傾げた。

「……光が家にこだわるのはわかるけど……じゃあ、何で無理して京都に通うん?俺に逢うためとか、リップサービスはいらんで。」

僕はうなずいて、ここ最近の出来事報告した。


今年のチャリティー美術展で、僕の父方の祖母のことを知るヒトと再会したこと。

父の会社を継ぐ気も、手伝う気もないと宣言したこと。

そして、さっちゃんのパパの喫茶店を僕がいずれ引き継いで続けていきたいと思ってること。


「とりあえず、大学に通いながらルーツを探そうかなって思ってる。……宗真さんにも逢いやすいし、お能も観たいし。」

リップサービスじゃなくて本心なので、臆面もなく付け加えた。

実際、今の状況では、気軽にお能を観に行くことができない。

……別に、時間も自由も存分にあるんだけど……僕は、さっちゃんに宗真さんと関係してることを知られたくなかった。

いや、宗真さんだけじゃない。

相変わらず、僕は、さっちゃんにだけは、涼しい顔だけを見せていたかった……。


宗真さんは、照れ隠しに苦笑してた。