「これじゃ、入れへんよ?」
そう聞いてみたけど、薫くんは、大胆にフェンスの穴に手を突っ込んで、引っぱった。
すると、フェンスがちょうど扉一枚分ぐらい、剥がれるようにパカッと開いた。
「な?入れるやろ?」
……いや、これは……確かに入ることは可能だけど、あきらかに不法侵入じゃないだろうか。
困って立ちすくむ私に、薫くんが手をさしのべた。
「大丈夫。藤やんが大丈夫って。」
そう言われても、その藤やんのこともよく知らないのに。
「せっかくここまで来てんし、行こ。ちょっとだけ。な。」
薫くんの哀願に、私はそれ以上の拒絶を断念した。
よくわからないけど、まあ、いいか。
黙って、薫くんに引っ張られてフェンスを越えてく。
すぐに建物らしきものが見えた。
お家?
山荘?
近づくと、それは古い洋館だった。
白く塗った木の板を浜屋造りのように整然と積み上げた壁と、経年劣化でかなり薄い水色の屋根。
真新しい頃は、小さなお城のように美しかったんじゃないだろうか。
「かわいい洋館。……これを見せてくれたかったの?」
笑顔でそう尋ねると、薫くんはニコニコ笑って、さらに私の腕を引いた。
「うん。こっち。覗いてみて。」
薫くんに促されて、玄関から少し離れた窓を覗き込んだ。
てっきり廃墟かと思ったら、中は綺麗だった。
誰か住んではるのかな?
細工の美しい白い家具、紙じゃない、たぶん織物のゴージャスな壁、高い白い天井からは華やかな凝ったシャンデリアが垂れ下がっている。
まさしく、小さなお城だ。
「素敵……。」
そうつぶやいたら、薫くんは満足そうにうなずいた。
「そやろ?……ほんで、あれ。見える?わかる?」
薫くんの指差した先には、立派な額に入った絵画。
柔らかい色合いの油絵だ。
「んー。……。あれ?」
額の中には、人物が1人描かれていた。
象牙のような乳白色の肌、長い黒い塗れたようなまつげの下に、深い憂いを含んだ美しい瞳。
形のいいお鼻も、赤い薄い唇も、知ってる!
「光くん!?」
絵画に描かれている人物は、光くんだ。
「な!そやろ?光にそっくりやんなあ?」
ぴょんぴょん飛んで、薫くんがうれしそうに同意を求めた。
「あ、うん。……そうね、そっくりね。あー、びっくりした。光くんかと思った。」
そうだ。
光くんじゃない。
よく見たら、あれ、女の人?
それに、光くんよりは年上に見える。
でも……あの瞳……。
あんな瞳、私、光くんしか知らない。
そう聞いてみたけど、薫くんは、大胆にフェンスの穴に手を突っ込んで、引っぱった。
すると、フェンスがちょうど扉一枚分ぐらい、剥がれるようにパカッと開いた。
「な?入れるやろ?」
……いや、これは……確かに入ることは可能だけど、あきらかに不法侵入じゃないだろうか。
困って立ちすくむ私に、薫くんが手をさしのべた。
「大丈夫。藤やんが大丈夫って。」
そう言われても、その藤やんのこともよく知らないのに。
「せっかくここまで来てんし、行こ。ちょっとだけ。な。」
薫くんの哀願に、私はそれ以上の拒絶を断念した。
よくわからないけど、まあ、いいか。
黙って、薫くんに引っ張られてフェンスを越えてく。
すぐに建物らしきものが見えた。
お家?
山荘?
近づくと、それは古い洋館だった。
白く塗った木の板を浜屋造りのように整然と積み上げた壁と、経年劣化でかなり薄い水色の屋根。
真新しい頃は、小さなお城のように美しかったんじゃないだろうか。
「かわいい洋館。……これを見せてくれたかったの?」
笑顔でそう尋ねると、薫くんはニコニコ笑って、さらに私の腕を引いた。
「うん。こっち。覗いてみて。」
薫くんに促されて、玄関から少し離れた窓を覗き込んだ。
てっきり廃墟かと思ったら、中は綺麗だった。
誰か住んではるのかな?
細工の美しい白い家具、紙じゃない、たぶん織物のゴージャスな壁、高い白い天井からは華やかな凝ったシャンデリアが垂れ下がっている。
まさしく、小さなお城だ。
「素敵……。」
そうつぶやいたら、薫くんは満足そうにうなずいた。
「そやろ?……ほんで、あれ。見える?わかる?」
薫くんの指差した先には、立派な額に入った絵画。
柔らかい色合いの油絵だ。
「んー。……。あれ?」
額の中には、人物が1人描かれていた。
象牙のような乳白色の肌、長い黒い塗れたようなまつげの下に、深い憂いを含んだ美しい瞳。
形のいいお鼻も、赤い薄い唇も、知ってる!
「光くん!?」
絵画に描かれている人物は、光くんだ。
「な!そやろ?光にそっくりやんなあ?」
ぴょんぴょん飛んで、薫くんがうれしそうに同意を求めた。
「あ、うん。……そうね、そっくりね。あー、びっくりした。光くんかと思った。」
そうだ。
光くんじゃない。
よく見たら、あれ、女の人?
それに、光くんよりは年上に見える。
でも……あの瞳……。
あんな瞳、私、光くんしか知らない。



