小夜啼鳥が愛を詠う

「さっちゃんは顔も頭もイイのに、心も綺麗だから……誰よりも大切な弟と幸せになってほしいから……。」

言ってて、涙がこみ上げてきた。


宗真さんは息をついて、天を仰ぎ、それから僕を抱き寄せた。

ぐずぐずと鼻をすすって泣きじゃくる……まるで子供のように……。


ただそれだけのことで、こんなにも気持ちが楽になるなんて、僕は知らなかった。


いつも強くありたいと生きてきた。

薫を、そして、あーちゃんを、さっちゃんを守りたい……その一心で空手を続けた。

誰にもこんな風に、真情を吐露することなんてできなかった。




「光もな。」

しばらくして、宗真さんが、突然そう言った。


「……なに?」

泣き疲れて、しぱしぱする目を少しこすりながら尋ねた。

「いや。……光が彼女と弟に幸せになってほしいように、俺は光に誰よりも幸せになってほしい。」

宗真さんは真顔でそんなことを言った。

「……ありがと。宗真さんは?幸せじゃないの?」


幸せなら、僕と浮気しないか……。

いや、でも、仕事も家庭も、ちゃんとしてるように見えるけど。


宗真さんは、苦笑した。

「幸せやで。できた嫁とかわいい娘に愛されて。」


……心からそう言ってるはずなのに……どこか悲しい響きを感じた。


「奥さんとは、お見合いなの?恋愛結婚?どうやって知り合ったの?」

僕の立場でこんなことを聞くと、奥さんに嫉妬してるみたいだな。


宗真さんの表情がすーっと鎮まった。

「恋愛、やな。一応。……最初に、俺が惹かれたんは、涼花(りょうか)の友達やけどな。出逢った時には、その子には別に好きなヒトがいて……諦めざるを得んかった。」

「それで、奥さんで妥協したとか?」

ちょっと失礼かなとも思ったけれど、妙にクールなので、わざとそんな聞き方をした。


でも、宗真さんの返事は、僕以上に苛烈だった。


「涼花は打算、俺は失恋から目を背けたのと、性欲の解消対象として都合が良かったから……かな。」

「……。」


ひどい!と、なじることはできなかった。


僕だって、似たようなものだ。

さっちゃんに手を出すことも、あーちゃんを押し倒すこともできず……後腐れなさそうな適当なヒトと関係してきた。