小夜啼鳥が愛を詠う

僕は意識して無邪気な笑顔を装って言った。

「あーそびぃま、しょっ?」


一瞬、池上さんはキョトンとした。

それから、楽しそうに声を上げて笑った。



こうして、僕らは、なぜかセフレになった。




もちろん、僕だって、最初からそんなつもりで来たわけじゃない。

でも池上宗真氏は、存分に、僕を甘やかし、かわいがり、愛でた。

宗真さんの腕の中は、確かに居心地がよかった。



「初めて電話で話した時、僕には、周囲に理解者が必要だと言ったよね。」

去年の秋の終わり頃だったっけ。

宗真さんが苦笑した。

「言うた。……まさか、あの時には、こうなるとは思ってへんかったけど……。まあ、俺が適任ちゃう?」

……どうやら宗真さんは、一回だけで終わらせる気はないらしい。

今まで関係を持った男も女も、関係の継続を願わないヒトはいなかった。

僕の中の魔性は、そっち方面でやたら強力らしい。

「……えー。でも、遠いしなぁ。次は、宗真さんが来てよ。」

拗ねるような響きが混じっていることが、自分でもおかしかった。

「確かに2日連チャンで来させたんは、悪かったな。来週まで待てば、そっち方面でお稽古あったんやけど……」

宗真さんはそう言って、グイッと僕を引き寄せた。

力と筋力なら負けないんだけど……身体は宗真さんのほうがまだ大きい。

背後から覆い被さるように抱かれると、すっぽりと全身が包まれるような気がする。

肌を合わせたその後も、こんな風に相手にくっついていられるのは珍しい。

まるで恋人同士みたいじゃないか。

「光に、とにかく早く逢ってみたかった。」

耳元で囁かれる言葉も、やたら甘くって……吐息がくすぐったくて、首をすくめた。

「ワガママだなあ。自分の都合で呼びつけて。僕、受験間近なのに。あと5日だよ?」

「ごめん。……でも、どうせ受験とか、余裕ちゃうん?記憶力めちゃめちゃすごいやん。成績いいんやろ?」

「試験はできても、出席率が悪いから、成績はよくないよ。……てか、そういう問題じゃないし。宗真さん、オトナなんだから、僕の都合も、ちゃんと配慮してよ。」

……でなきゃ、とても続かないよ。

宗真さんは言葉にしなくても細やかな機微がちゃんと伝わるヒトのようだ。

「……う……。わかった。気をつける。」